作品
□知りたい、優しく愛したい
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優しくなるって難しい…
「正チャンの好きな食べ物はなに?」
正一が経過報告のため白蘭に連絡を入れると、モニターの向こうにいる人物は唐突にそんなことを聞いてきた。
「…はっ?」
正一は正直、変わり者の上司に付いていけないときがある。
今みたいに、へんなことを聞いてくることが多々あったから。
他には、仕事中に食事に誘われたりプレゼントを渡されたり。
白蘭の意図が分からない正一にとっては、白蘭の行動は悩みの種であった。
「だから、好きな食べ物は何か聞いてるの。」
「…なんでそんなことを教えなくてはいけないんですか?
僕は経過報告をしたいんです。
白蘭さんみたいに、暇じゃないんで。」
言葉の端々に嫌味が込められている。
白蘭は口元が引きつるのを感じたが、いつもの笑顔を維持した。
しかし、思わず口から出た言葉が…
「正チャンは頭が固いんだよねぇ。
もっと余裕もって考えなくちゃ。
そんなんだから、逆ギレばっかするんだよ。」
わざとらしく溜め息までしてみせると、モニター越しの正一は俯き震えている。
白蘭がハッとしたのも束の間、モニターの電源が落とされてしまった。
白蘭は何度か回線を繋いでみるが、向こうが強制的に電源を落としているため連絡が取れなくなってしまった。
白蘭は、自分の失態に溜め息を吐きソファに背中を預ける。
「あんなことが言いたかったわけじゃないのになぁ…」
白蘭は、正一のことが好きだった。
しかし、想いは空回りしてしまい気付けば正一から嫌われてしまっている。