お題

□「もういらないんだろう?」
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もういらないんだろう?


私は先日、失恋を経験した。
それはもう、目の前が真っ暗になるぐらいの衝撃だった。
毎日、そればかりが頭の中を駆けめぐる。
過去には戻れないと分かっていても、どうしてこんなに考えてしまうのだろう。

学校から帰ると、玄関に見覚えのある赤いスニーカーがあった。
幼なじみの裕太のスニーカーだ。
相変わらず土に汚れて、鮮やかな赤色のスニーカーが変色している。
階段を上り、自分の部屋に入ると裕太が部屋の真ん中を陣取ってあぐらをかいていた。
何やら手を動かしているから、気になって裕太の頭上から覗き込む。

「あ!!」
裕太の手には、彼氏と一緒に写った写真があった。
足下には、ビリビリなった写真が散らばっていた。

「もういらないんだろう?」

彼が私の顔を見て言う。
「誰もそんなこと言ってない」
ブスッと頬を膨らませて、彼の隣にぺたんを座り込む。
彼は、止まらせた作業を再開させる。
ビリビリと私が大切にしていた写真を容赦なく破っていく。
私の彼氏だった人の顔が粉々になっていく。笑顔も、粉々だ。

「早くお前の脳内からあんな男消えちまえ!ばーか」

パラパラと粉々になった写真の切れくずを、私の頭から振らせる。




「ねぇ、この紙くずと一緒に私のいらない記憶も捨てられるかな」








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