オリジナル恋愛小説

□以心伝心3
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過去をさかのぼった時に、私は彼の行為を理解できた。

− 以心伝心

私と白石くんが結婚したのは、恋愛感情なんかじゃない。
私があの時、怪我なんてしなければ結婚なんて話まで至らなかった。
私は最低な人間だった。最悪な人間だった。


部活の安全管理がしっかりできていなかっために、私はたまたま事故に遭遇しただけ。
素振りした部員のテニスラケットがたまたま…そう、たまたま偶然、私の額に当たっただけ。
それなのに、私が怪我をしたと聞きつけたテニス部員が私の元に駆け寄ってきた。
その中に、クラスメートの白石君もいた。真っ先に私を心配してくれたのは、白石君だった。
「大丈夫か?はよ、保健室にいかな!」と私を背中に抱き上げた。はっはっと荒い呼吸をしながら、私を抱き上げたまま保健室まで走る。
廊下を走り掛ける姿を、通り過ぎる学生がみな見た。
「大丈夫、一人で歩けるよ」と言っても、彼は「あかん!怪我したんやから」と首をぶんぶん横に振って聞いてはくれなかった。
なんでこんな必死になってるんだろう。怪我させた責任を感じているからだろうか。
こんな私のために、申し訳ないと思った。

怪我した傷は確かに痛かったけれど、別に大した怪我じゃなかった。
保健室で、手当をしてもらいそれで終わりだった。
大きな怪我が跡になってしまったのは、己のせいだった。
きちんと消毒もせずに、いい加減に過ごしていたから怪我の傷口が予定よりも広がって、結局、額に傷が残ることになってしまった。
鏡で見るたび、消えることがなさそうな傷。
女の子として、これはまずいと内心焦りながらも、心のどこかではしょうがないと思っていた。
「傷の調子はどうなん?」と白石くんが聞いてくるから、毎度嘘ついた。
「もう全然大丈夫」と笑った。それに釣られて白石君も、安心したように笑っていた。
やっぱり責任感じてたんだとそこでわかった。
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