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□Beautiful Fighter
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「……。ゴリラがお前に怒るのは、心配してるからじゃねェの?男とか女とか関係無く、…仲間としてよ」
「…‥……」
「‥名無しさんだって、判るだろ?そん位」
「‥……。はい…」
微かに声が震えてるのに気付いて、名無しさんへと視線を戻す。
「………!」
――…一瞬心臓が止まったかと思ってしまう程、驚いた。
その瞳に涙が浮かんでいたから。
「………」
俺の視線に気付いたのか顔を反らすと、強引に目を擦る。
「…コラ、お前怪我してんだから擦んな」
思わずその腕を掴むと、折れてしまいそうな細さで。
それでも泣き顔は見せたくないんだか顔を反らす名無しさんに、こいつは何処まで頑固なんだか、と思うと同時に可愛いと思った。
俺から見りゃ充分女らしいのに、勿体無ェ。
…多分本人は気付いてねェんだろうけど。
「………‥」
掴んでいた手を離しても、こちらを向こうとはしない。
全く…。ホントに負けず嫌いだこいつは。
とりあえずそっとしといてやるか、と名無しさんの背中を眺めて気付いた。
…刀が無い。
いつも大事そうに腰に差してたのに珍しい事も有るモンだ。
何となく気になって、未だに背を向け続ける名無しさんに
「…お前刀どうしたの?」
そう訊けば、何も差さっていない腰を触る。
「……昨日、折れました‥」
「…そりゃまァ、大変だったな。何だったら良い鍛冶屋紹介してやるけど?」
「…いえ、今作り直して貰ってますから大丈夫ですよ」
「どん位で出来んの?」
「…1週間、だそうです」
それも落ち込んでる理由のひとつか…。
「……よし、じゃあ銀さんがコレを贈呈してやろう」
「…?」
振り向いた名無しさんに自分の木刀を差し出すと、少し赤くなった目を見開いた。
「ほら腰に何か差してねェと落ち付かねェだろ?とりあえず新しい刀が出来るまでコレでも差しとけ」
「……でも、これ坂田さんの大切な物でしょう?」
「良いんだよ。どうせ通販で買った奴だし。あ、でも唯の木刀じゃねェよ。銀さんの汗と血と涙と、あと…何か変な汁が染み込んでるからすっげェぞ」
「………。余計要らないんですけど…」
嫌な顔をする名無しさんの手に無理矢理それを握らせて、
「良いからお守り代わりだと思って貰っとけ」
と笑えば、納得していない様に俺の顔と木刀を交互に見る。
「ぜってェ名無しさんの事護ってくれるからよ」
その言葉に、少しだけ頬が赤くなった様な気がした。
出来るならそれは、気の所為で有って欲しく無いとさえ…。
「…有難う、御座居ます」
両手で木刀を握り締める名無しさんの目は、唯真っ直ぐだった。
その生き方を、邪魔する気にはなれない。
だけど、どうか知って欲しい、と。
此処にお前を護ろうとする男が居る事を。
Beautiful Fighter
美しい人よ
いつか好きだと、言えたなら