小説置き場

□暴走彼。
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いつも通り昼休み時間に屋上まで上がり、丁度死角となるであろうタンクの後ろで昼寝をしていた時、騒動は起こった。
「なつき―――!!!どこだぁぁぁああああああ!!!」
激しく、そして迷惑極まりないくらいの大声で、私を呼ぶ人間がいた。
居なくてよいと本心で思うが、居るのだからもう仕方ない。

「昼休みだ!一緒にお弁当を食べよう!!!さぁ!出てくるんだ!彼氏がお待ちかねなんだぞ!!!!」
うるさい、誰が彼氏だ。
私は認めてないぞ。告白はされたものの、私はいい返事なんて返していない。というか返事すらしていない。

―――バンッ!
「校舎はすべて回った!残るは屋上くらいか…どこだ…どこに居るんだマイハニー!!」
「お、おい鳴上…恥ずかしいから落ち着けって…」
どうやら、後をついて花村もいるようだ。

「陽介!お前も探すのを手伝え!リーダー命令な!」
「…職権乱用…」
「何か言ったか…?」
「いいえ…なにも…はぁ〜もぉーー。」

花村、脅されたのか?可哀想に。私はとりあえず関わらないようにしようと決め込んでいる。

「あのさーなつきお前さ、そこに居んの分かってるから。つか足見えてるぜ。タンクの裏に居るんだろ。出てこい。じゃないと鳴上が向かうぞ。」
何ということだ、自首を勧められている気持ちだ。
鳴上悠がこの死角であるはずの場所に来たら…それはすなわち私のイロイロが大変なことになる。

「はいはい。自首しますー。つか花村ぁ!止めてよソイツ!!」
「無理。」
「即答するな!」
「マイハニー!!!!」
「ぎゃぁぁぁあああああ!!抱きついてくるな!やめろぉぉぉおおおお!!」

花村もさすがにやりすぎだと思い、鳴上悠をはがすのを手伝ってくれた。



「で、なんで悠はそんなになつき見ると…その…」
「抱きついたりとするんですか!?」
「好きだから。」
「お前に恥じらいは無いのか」
「人を愛することに恥じらいなど必要ない!」
「お前はお前という存在を恥じろ!そして消えろ!!」
「照れているのか?そうか、なつきの属性はツンデレだったのか。そういえばそういうそぶりが多いな…俺の気を引くためか…可愛いな。」


今のこいつに何を言っても無駄たと悟った花村は、そそくさと自分の弁当を広げすでに食べていた。
「あ、お弁当…」
「んあんだよ?」
「食べながら話すな。」
「ごくっ。なんだ?お前忘れたのか?」
「教室。鳴上から逃げるのに必死で忘れてきた。」
「なぁ、俺の存在を無視しようとするのは罪だとは思わないか?」

「はぁーお腹すいたし、教室戻るかなぁ〜」
「そうか、なら俺もなつきの教室で食べよう。一緒に机をくっつかせて、向き合って食べよう。」

「千枝と雪子お昼まだだといいなぁー」
「あの二人ならもう食べてたから今行っても食べ終えているんじゃないか?」

「はぁーめんどくさいな。サボろうかな。」
「まったく、俺とそんなに一緒に居たいからと言って授業をさぼるなんて…可愛いな。よし、授業を抜け出して何処へ行く?」

私が無視している事を気付いてください。そして失せてください。

「ねぇ、花村…」
「っ!?な、なんだよ…」

突然話を振られて驚いた花村が、食べていたものを詰まらせていた。
汚いから吐くなよ。飛ばしてもくれるなよ。
「なんで鳴上ってあんなにさ…私の事追いかけてくるわけ?」
「あーそりゃー…あれだろ?」

どうも歯切れが悪い。
というより、言うのをためらっている様にも見える。

「聞きたいか!」
やっと自分に興味を持ってくれたのが嬉しかったのだろうか?
ものすごく輝かしい笑顔でまるで菩薩様のような感じでこちらを向いている。
こっちみんな。

「お、おい悠…お前それは言わない方が…」

花村の制止も、もはや聞こえてなどいないのだろう。
意気揚々と語りだした。

「上下、純白のレースのフリフリの下着つけて、メイド服着てくれて…あぁ、白のニーハイに猫耳つけて『ご主人様お帰りなさいにゃ〜』とかって言ってお出迎えしてくれたら俺的にはもう、その場で押し倒してそのまま最後まで頂いちゃって『ご主人様のえ・っ・ち❤』的な感じで言われたらもう、そのまま、また勢いよくなるよね。あぁ、いいよね絶対に似合うよね…見たいな…っていう妄想をなつきでしたんだよ。そしたら似合いすぎてもうさっきまで落ち着いていたのがもう爆発しそうでたまらなくて、その日からなつきを見かけるとこう…疼くといいますか、俺の妄想を現実にしてやろうと思ってな!!」

輝かしい笑顔で、とんでもないセクハラを受けました。
心が折れそうです。

後日、何処で知ったのか私の家に来て、彼の妄想が現実になったお話は封印したいと思う。
彼はいろいろな意味で暴走している。
 

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