小説置き場
□Hydrangea
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私は紫陽花が大嫌い。
みんなに言われる。貴女は紫陽花みたいな人ねって。
紫陽花の花言葉は、移り気、高慢、貴女は美しいが冷淡。
いい意味なんてないじゃない。
結局は、私のことを冷たいと、そういいたいんだ。
どんどんそうやって凍り付いていく、私の心。」
「んでさ〜そこでバニーがな!」
「だから、その話はもういいでしょう、虎徹さん。なつきもそんな話、聞きたくないでしょうし。」
「あー?そうなの?」
「いえ、続けていただいても結構ですよ。」
「えーなつきちゃん、興味ないだろ!」
興味、か。
良く分からない。
きいて、それでどう反応すればいいか分からない。
「まぁ、中途半端にきいたら気になるよな?夜、寝れなくなるくらい気になるよな?」
「眠れますが、そうですね、気にはなります。」
「よーし!んでな、バニーのやつ、犯人追っかけるのに集中しすぎて、目の前にあった紫陽花園の紫陽花、全部だめにしやがったんだよー!!俺にいっつも賠償金ばいしょーきんて言ってるバニーが!紫陽花園の!紫陽花を!だめに!した!!!」
なぜそんなに区切って言うのだろう。
とりあえず、強調したかったのだろう。
バーナビーが、賠償金を払うことを。
「だから、それは虎徹さんがいきなりワイヤー飛ばしてくるからでしょう!?」
「いーやー!いつものお前ならよけれるもん!」
「貴方は僕をけなしたいんですか?褒めたいんですか?」
「なぁ!なつき、お前どう思う!!?」
「どうも何も、私、紫陽花が大嫌いなので、なんとも。」
「紫陽花が・・・」
「嫌い!?なんでだよ?お前、紫陽花、似合いそうなのにな。」
「やめてください!」
「?」
「紫陽花の、花言葉・・・知ってます?」
「は、はなこーとーばー?」
「主に、移り気、高慢・・・貴女は美しいが、冷淡。でしたね。」
「おぉ・・・そんな花言葉なのか。」
いい意味なんてない。
無意識とはいえ、要するにお前は冷たいと、突きつけられているようで、いやだった。
だから紫陽花は嫌い。
「紫陽花にいい意味なんてないんですよ。だから私、嫌いなんです。」
ピシャッと言い切ると、虎徹さんはしょんぼり顔。
バーナビーさんは、すこし驚いた顔をしていた。
「貴女、まさか紫陽花の花言葉、これだけだって思ってません?」
「は?」
「はぁ。ちゃんと意味、調べてから嫌うなら嫌ったらいいじゃないですか。僕は好きですけどね、紫陽花。」
あのバーナビーさんが、好きだといった。
別に気になるわけじゃない。バーナビーさんが好きだと言ったから気になるわけじゃない。
紫陽花 花言葉
貴女は冷たい 自信家 浮気・・・
ほら、いい意味なんて・・・
『元気な女性』 『辛抱強い愛情』
「えっ、うそ・・・」
ずっと、勘違いしていた。
あとで母に聞いてみた。
どうして私のことを、紫陽花みたいだって言ったのかと。
「貴女は昔、本当に元気な子でね、ほら、紫陽花って雨の日でも元気に咲いているでしょう?雨が降らなくても、太陽の光に、辛抱しながら耐えて、やっと雨を受けて、元気になって。あなたにはそういう子になって欲しかったのよ。」
元気で明るく、辛抱強い、愛情深い女性になって欲しいと、そう願っていたらしい。
それを私は、貴女は冷たい。冷淡だといわれていると思っていた。
どんどん凍りついた私には、ぴったりだって思っていたけれど、それは勘違いだった。
私がどんどん、寄せていっていた。
私も紫陽花にならなきゃって。
もっと冷たく、ならなきゃって。
でも本当は・・・
本当は――
「あの、バーナビーさん!意味、わかりました!」
「はい?」
「紫陽花の、意味・・・。私、そんな女性に・・・なれるでしょうか?」
きっとこうやって自分をさらけ出すのが怖くて、逃げたんだ。
でも、私はそれを認められなくて、罪のない花に、八つ当たりをした。
彼はあごに手を添えて、くすっと笑い
「貴女は・・・本当は元気で明るくて、辛抱強い、愛情の深い女性ですよ。ずっと見てた僕が言うんです。間違いないです。」
まぁ、巷で言うツンデレなんでしょうけど。なんていいながらとても優しく、笑っていた。
その顔に、自分でも珍しく見蕩れていたが、先ほどの言葉を思い出して固まった。
「え?ずっと・・・見てた?」
「あーえぇ、まぁ、そういうことですよ。」
ばつが悪いのか、ちょっと目線を外した。
でもすぐに元に戻し、私にはっきりと聞こえる言葉を告げてくれた。
「なつきさん、移り気だけはだめですからね?」
「・・・はい。」
END
紫陽花/貴女は美しいが冷淡
『元気な女性・辛抱強い愛情』
まぁ、正直調べてみたら、この2個くらいしかいいことなかった気もするのです。
でも、紫陽花好きです。
2012.10.31