小説置き場

□曇り空
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ザァザァと音を立てて振っている雨。

犯人を捕まえた後、しつこいインタビューと野次馬から逃げ回り、誰も来ないビルの屋上で休んでいた。

逃げている途中、同じく逃げていたであろうバーナビーさんと出くわし、一緒にここまで来た。
というか、彼がここを教えてくれた。


「雨激しくなってきましたね。そろそろ戻ります?」
「……うん。」

なんだかまだ、ここに居たい。

私はヒーロースーツを脱ぎ、直接肌に、雨を受けた。

「なっ!貴女、一体何をしているんです!?風邪でも引いたら…!」
慌てて私のもとに駆け寄ってきたバーナビー。
なんだか必死すぎて面白くなって、声を出して笑ってしまった。

「あはははっ!!バーナビー必死すぎ!私、風邪引かないし、今はこうしていたい気分なんだ。」
「?」

明らかに意味がわからない、といった顔をしていた。
でもすぐに「あぁ…」と何かを納得して、彼もヒーロースーツを脱ぎ出した。
と言っても頭の所だけ取った。

なんだか今になってドッと疲れが襲ってきた。

地べたに大の字で寝転がった。
いつもならバーナビーに怒られるのだが、今日の彼は…彼も、おかしい。
私と同じ事をした。

顔に雨粒を受けて、反射で瞼を閉じる。




―――ザァー

静かだ。


「なつき…」
「ん?」
「僕にしません?」
「は?」

瞼は閉じたまま、彼の言葉を待つ。

「貴女を守る自信ありますし、貴女を一人で泣かせるつもりもありません。だから…僕と付き合って下さい。」

―――ザァー


私は答えない…いや、答えられない。

「やっぱり、あの人の方がいいんですか…?」
「分かんないんだ。もうね、なんにも感じてないから…多分、もう、好きじゃない…でも…」

すぅーー。

深く息を吸い込み、吐く。

「ごめん、返事は今すぐには出来ない。」
「…分かりました…。」
「でもね」
「?」

身体を起こし、バーナビーの隣に移動し、座る。

「必ず返事はする。だから…気持ちの整理をさせてほしいんだ。このままズルズルと他の人に流れても、きっと同じだから。だから…一回、全部終わらせる。綺麗にして…そこからまた…」
「スタートさせる?」
「うん。」

隣を見ると彼はしっかり目を開けて私を見ていた。
とても綺麗な瞳の色だった。
このどんよりとしたこの空とは正反対の、濁りのない、きれいないろ。

「バーナビーの目の色すき。」
「目の色だけですか?」
「あはっ、そう、今はね。」
「今は、ですか。じゃあ、今後に期待ですね」
そう言って、彼は笑った。

それすら綺麗に見えた。








私の心も、この空も綺麗に晴れたら、彼に伝えよう。

今思っている想いの全てを…。

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