小説置き場

□おやすみ
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朝の日課は、コーヒーを入れて、サンドイッチを作る。

それが毎朝の私の仕事。


とても今、世間をにぎわしているKOHとは思えない、寝ぐせをつけて、ぼーっとした顔で起きてくる彼、バーナビー・ブルックスjr.

「おはよう、バーナビー」
「…お、はよう…ございます…」

まだ眠いのか、切れの悪い挨拶を返し、のそのそとキッチンに向かってきた。


――ぎゅ〜〜

まるで子供のように、後ろから腰に手を回し抱きしめて来た。

「起きて、貴女が居なくて、探し…ました。」
「うん、ごめんね。」
「…そしたら、キッチンからコーヒーの香りがしたので…すぐきたんです。」
「うん、もう出来てるから飲む?」
「はい…」

彼は普段、寝起きはいい方だ。
でも今日は珍しくお休みが取れたらしい。

昨日は、二人で久しぶりに外食をした。
少々羽目を外し過ぎたのか、彼の呑むペースがとても速かった。

「バーナビー、もしかして二日酔い??大丈夫?」
「えぇ、だいじょうぶ…です。ただ…」

そういうと同時に、大きな欠伸が出た。

「ふふっ、今日はお休みなんだし、二度寝でもしたら?」
ぶんぶんと頭を横に振り、嫌だと訴えているらしい。
普段のバーナビーからは考えられないくらい可愛い。

「せっかくの休みなんです。貴女と一緒にいたいです。デートだって、この間も、出動が掛かってしまって・・・」
「いいんだよ、ヒーローしてるバーナビー見てるの好きだし。あ、それじゃあ、私もお昼寝する。」
「えっ。でもそれじゃあ」

私も一緒に居たい。
でも、疲れているのは目に見えて分かる。

それでも、プライドなのか、そのことを隠そうとする。
腹が立つくらい隠そうとする。
私からすれば、一目瞭然なのに。

「私が今したいのは、寝ることです。何か文句でもー?」
「いえ、貴女って人は…本当にいいんですか?」

きっと、せっかくの休みなのに、どこにも出かけなくて良いのか?という確認だろう。
別にかまわない。

「別にいいんだよ。一緒に居て、抱きしめててくれるなら、それでいいんだよ。」
「目が覚めたとき、最初に見るのは貴女が良い。」
「私もだよ。」
「僕が起きるまで・・・隣に居てください。」
「もちろん。」
「ボーっとしてるだろうから、キスしてください。」
「う、うん。頑張る。」

コーヒーをちょっとだけ飲んで、彼は私の腕をつかんだまま、寝室へとまた戻る。

もぞもぞと布団を直し、まるで腕枕するといわんばかりの体勢で、ベッドの中で待っている。

「えっと・・・」

―ポンポン

自分の隣の開いているスペースを、よく読めない表情で叩いている。
早く来い、といいたいのだろう。

「一緒に寝てくれるんでしょう?早く・・・ちょっと寒いです。」

一緒にお昼寝すると言い出したのは私だけれど、この状況ははやり照れてしまう。

「なつき?」

捨てられた子犬のような、いや、子兎のような目で見てくるバーナビーに負け、意を決してエプロンを取る。

待っていましたと言わんばかりに、彼はニコニコしだす。
でも、その顔に意地悪さはなく、無邪気な子供のような表情だ。

「ぎゅ〜って、してください。おれも・・・する、ので・・・」

おやすみ3秒なのだろうか
私が入ると同時に腕に私の頭を乗せ、反対の手で私の腰を自分のほうへと寄せる。
厭らしい手の動きではなく、ただの抱擁として。

「ふふっ、ぎゅ〜。おやすみなさい、バーナビー。いい夢を。」
「おや、すみ・・・なさ・・・・・・」

静かに眠った彼に、軽くキスをし、私もまどろみの中へ身を落としていく。
心地よい、彼の腕の中で。

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