小説置き場

□季節の隙間で
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最近の季節はなんだかおかしい。

春、夏、夏、気持ち秋ですぐに冬。

暑い暑いと思っていたのに、季節は突然別れを告げて、準備もままならぬまま、冬に突入してしまった。

よくよく考えると、そりゃあ11月にもなって暑いって言う方が可笑しいのだけれど。


「にしてもさ、この寒さはないよねーくわぁ〜〜ホント、寒すぎだって!!」
「千枝、足出してるもんね…見てるこっちが寒いわ。」
「なつき、スカートの下にジャージって…ぷぷっ…へんだよ…あははっははっ!死ぬ!笑い死ぬ!!」
「ねぇ、今のどこに笑いのスイッチあったの?千枝。」
「んー、今のは完全に分からん!」

学校も終わり、日暮れが早くなった町を3人で並んで歩く。
一年前は、もっと賑やかだった…


「鳴上君、元気にしてんのかなぁ〜」
「ホント。アイツ全然連絡よこさないんだけど、どういうことよー」
「え、なつきに無いなら私たち、絶対にこないじゃん!」
「…この間、なつきの寝顔送ったら、『天城、グッジョブ!』ってかえってきたよ?」
「雪子、それは…」
「うん、しかも何を普通に私の寝顔撮ってあまつさえ送ってるのさ。」
「え、喜ぶと思って。」

雪子は今日も絶好調。
去年は雪子に必死に突っ込む千枝と花村。
そこにこれまた天然な完二君が入り、りせちゃんに怒られて、それを見て笑っている直斗くん。
そして…そんな私たちをいつも見て、笑っていてくれた…鳴上悠。

私たち、元特捜本部のリーダーで、私の彼氏…の、はず。


「どうせ、私の写真送ったって喜ばないよー。あの馬鹿、不感症なんだよ。心が不感症なんーーー!!!ばっかやろーーー!!」

この二人の前だからこそ出来る叫び。

「あはっ!それ鳴上君が聞いたら怒るんじゃない?誰が――

「誰が馬鹿で、心が不感症だって?」

そうそう、それそれ!……って、えっ!?」


いきなり聞こえた低い声。
聞き覚えのある、ちょっと意地悪さを含んだ、そんな声。


「…うそ、ゆ、う?」

勢いよく振りかえると、彼が、鳴上悠が立っていた。

「全く。折角来たって言うのに、そんな酷い事言われると思わなかったよ。」

その後、聞き取れるかどうかギリギリの声で、町中探してやっと見つけたのに…と。

「わぁ!鳴上君じゃん!!超久しぶり…でもないか。夏休み振りってとこ?」
「あぁ、そうだな。里中は相変わらず…寒そうな格好だな。」
「あははー、明日からはジャージ着用だねー」
「ぷっ、あははははっ!!ジャージ!ジャージ!!!ぷはっ、な、鳴上く…久しぶり…千枝がジャージで、ジャージが千枝で…あははははは、もう駄目、本当にもう、ダメだってば!!!」
「アンタの頭がヤバイってーの!もう、雪子、ほら行くよ!!」

馬鹿笑いしている雪子の手をつないで、どこかに行こうとする千枝。

「えっ、千枝どこいくの!?帰りジュネス寄ろうって約束したじゃん!」
「あー今度ね。ほら、私ら、お邪魔しちゃ悪そうだし…私らはいつでも行けるんだし、さ?」

千枝は千枝なりに考えてくれていたらしい。
その後、雪子を連れてそそくさと帰って行った。





「…皆、相変わらずみたいだな。」
「まぁ、ね。」
「天城は久しぶりに会うと、こう…衝撃が強いな。」
「今日は特別だと思うけど。でも、ああいう所、好きだけどね。」
「まぁな。」
「花村とかとは会ってきた?アイツ、相棒ぉ〜俺を置いて行くなぁ〜とかうっさくてさ。」
「まだ会ってない。アイツそんな事言ってるから、モテないんだよ。」
「わーひっどーい。」

何気ない会話も、凄く心があったまっていく感じ。


寒くてたまらなかったはずなのに、隣に彼がいるだけで、話すだけで、もう寒さなんて忘れてしまうくらいに、私は舞い上がっていた。



「なつきも相当酷いけどな。学校終わってすぐにこっちに来た俺に、バカとか不感症とか?」
「あーいやぁ…」

舞い上がっていた私は忘れていた。
そう言えば、そんなことを言った気がする。

「まさか、忘れたなんて言わないよなぁ?」

そう言いながら、じりじりと近寄ってくる。

意を決して、彼に背中を向ける。


そして――





走る。




「なっ、こら!逃げるな!!」



走りながら、後ろで慌てて追いかけてきているであろう彼に向って



「ほら!置いて行っちゃうよ!!…悠!」
「待てって!…何!?」





「おかえり!!」

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