お題作品

□これが最高のバッドエンド
1ページ/1ページ

とても大事だからこそ、俺のそばに居てほしい。
でも、それは出来ない。
俺のそばに居れば、この町で起こっている事件に巻き込むかもしれない。
いつ犯人が彼女を標的にするかもわからない。
だから、だからこそ、自分の心にふたをする。
クールじゃないんだ、本当は。中身なんてドロドロでめちゃくちゃだ。

「あ、あのね鳴上くんが…その…」

あぁ、この先は予想がつく。

「好きです。」

うん、俺も好きだよ。
そう返事が出来たらどれだけ幸せだろう。
もしそうすることが出来たら、俺はきっと彼女を抱きしめて、キスをするだろう。
でも、それは叶わない。

「その、ごめんねいきなりで…」
「告白って大体がいきなりじゃない?」
「あっ、そっか」
ふふって、笑う君が可愛い。愛おしい。この手の中に捕まえてしまいたい。

でも

「ごめん。」
「あっ…そ、だよ…ね。ごめんね。」
そう言ってうつむく君。
君が謝ることじゃないんだ。

「ごめん。君とは付き合えない。俺、誰とも付き合う気がないから。」
「そっか…うん…聞いてくれてありがとう。」
顔を上げた君は、目元にうっすら涙を浮かべているのにもかかわらず笑顔を浮かべている。
きっと、この先気まずくならないように、俺の事を考えてくれて、笑顔で居てくれるんだよね?
「ねぇ、断っといて勝手なんだけどさ…」
もし許されるなら…
「お友達、続けてくれる?鳴上くん…」
「えっ」
「お友達、やめないで欲しいなって…」
「俺も、そう言おうと思ったんだ。良かったら、友達のままで居てほしい。」
「…うん。ありがとう。」

俺はどれだけこの短時間で彼女を傷つけているのだろう。
それとともに溢れ出る喜びと罪悪感。

そのまま無言になり…
お互いなんとなく「じゃあ、また明日」なんて言って別れた。

そして、彼女はきっと俺の知らない人と出会い、共に生きていくんだろう。
ずっと俺は君の事を引きずるかもしれないなと思いながら…

君を巻き込みたくないだなんて、そんなの建前だ。
俺はただ、俺の中にある黒くてドロドロしたものを彼女にぶつけない為に…彼女を己の手で壊さないように…
そのためには、自ら離れるしかなかった。
それなのに、友達では居たいだなんて、なんて自分勝手なんだろう。

きっと優しい、優しすぎる彼女は明日も、友達として居てくれるだろう。
友達として俺に微笑みかけてくれるだろう。


あぁ…残酷だ。
これが最高のバッドエンド なんだな。なんて柄にもなく思った。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ