お題作品

□キャンディひと粒
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「藍」
「なあに?」

きっとこれは、私の、夢だ。
こうなって欲しかったという、夢なんだ。

「ほら、これあげるよ。」
「ん?キャンディ?」
「うん、ポケットにね、一個だけ入っていたから藍にあげる。」
「ありがとう、花京院くん。」
「いいえ、どういたしまして。」

きっとこれは、僕の、夢なんだ。
こうなって欲しかったという、夢だ。
だって僕は…


「ねぇ、花京院くん。」
「なんだい?」
「花京院くんは、いま、幸せ?」
「きみは?」
「質問に質問で返すなんて、いけない子。」

私は、今は、幸せよ。
今だけ、ね。

「僕は、君が藍が幸せなら、僕も幸せだよ。」
「私もね、花京院くんが幸せなら、私も幸せなんだよ…」

僕はね、君が笑ったり泣いたり、怒ったりしている姿を見るだけで
幸せなんだよ。
もう、もう僕が君の隣に立って、君を笑わせたり、怒らせたりは
出来ないからね。

「花京院くん…花京院くん…帰ってきてよ、寂しいよ、私、わたし…
強くないから、寂しくてたまらないよ」
「ごめんね、僕は君を、泣かせることしか出来ないんだね。」

きっと君は優しいから、この夢から覚めたら、また君は泣くのだろうね。
だから僕は、少し意地悪をする。

「違う!そんなこと…私が弱いから、泣いちゃうだけなの!
花京院くんのせいじゃあ、ないの。」


僕だって帰りたいよ、君がそんなに悲しむなら戻りたいけれど。

「藍、これでさよならだよ。この夢も、忘れて」

そして僕は、彼女に口づけを送った。
次に目を醒ましたら、もう君はこの夢を憶えていない。それでいいんだ。


ずっと僕は、君を見守っているから。


「藍、愛してるよ」


――――――



「んん〜ふわぁ〜よく寝たわ―」

何か夢を見た気がするけど、何にも思い出せない。
まぁ、よくあることだし気にせずにいた。

「いてっ!」

起き上がろうとして寝がえりを打ったら、お尻あたりに痛みが走った。
驚いてその痛みの原因を手で探ると、何かをつかんだ。
正体を確認するために布団から手を出し、つかんだものを見ると…

「キャンディ?なんでこんなの…」

袋から開けてキャンディひと粒だしてみると、それは

「緑色…花京院くんみたいだなぁ。」
彼自身と言うよりも、彼のスタンドの、エメラルドスプラッシュみたい。

とりあえず、そのキャンディを口に放り投げて、私はまた、日常に溶け込む。

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