お題作品

□銀のペンダント
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「おい、」
ぶっきらぼうに声を掛けられ、声の主の方へ振り向くと
小さな箱が飛んできた。

「うわっ、危ないでしょ!承太郎!」
「うっせぇ。てめぇがんなもん欲しがるのが悪い」

きょとんとした顔をし、首をかしげると
やれやれだぜ…と大してずれてもいない帽子を深くかぶり直した。

「はっ!?私、何か欲しいなんて言ったっけ?」
「いいから開けろ。」
「はぁ…」
承太郎が今何を考えているのかが全く分からない。
表情も帽子のせいでよく見えない。

「じゃあ、あけるね。」

小さな箱に可愛らしいリボンが装飾されている箱を開けると、そこには
銀のペンダントが入っていた。

「えっ、これ」
「お前が前に欲しいっつってただろう。」

以前、雑誌をぼけーっと読みながら、とても気に入った
デザインのペンダントが目に映り、何気なく欲しいなぁ…と
本当に無意識に呟いていた。

「そんな事…憶えててくれたの?」

「いいからほら、貸せ。」

開けろとか貸せとか、この人はどれだけ自由なの
だろうとおもったが、ペンダントの入った箱ごと渡そうとすると
中におさめられているペンダントだけを取り、すっと私の前に
移動し、首にそれをつけてくれた。

「あ、ありがとう。」

「ああ。」


照れてお互いが目を伏せていると、承太郎が微かに動く音がした
そう思った時には、彼に抱きしめられていた。
耳元がふとくすぐったいと思ったら、彼の唇が耳元に近づいていた。


「誕生日おめでとう。」

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