ヴァンパイア騎士:連載

□薔薇の紅
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いつからか笑えなくなっていた。

詳しくは覚えていない。

ただ…
最後に笑ったのは――



あの人の前でだった…


――――――――




【最近腹が立ったことを書きなさい。】

(………。)

今、ナイトクラスの生徒がやっている…否、やらされているプリントがある。


「…あの理事長意味が分かんない。」

そうぼやいているのは、早園瑠佳。

「仕方ないさ。」

「分かってるわよ。」
なだめているのは、架院暁

瑠佳は、暁になだめられたのが不服なのか、冷たく返事を返し直ぐにプリントに目を向けた。


「……。」

「ミスト。どうかしたの?」

「枢様…」

先ほどからずっとプリントと睨めっこをしていた私に、声をかけたのは、玖蘭枢様。

「どこか分からないところがあるの?」


最近この黒主学園のナイトクラスに入ったばかりの私に何でも教えてくれる人。

「このプリントの意味が分かりません。」


「あぁ…そうだね…たまにこんな風に、理事長が遊び半分でこんな課題をだすんだよ。」

遊び半分とは、教える側の人間としてどうかと思うが…。


「はぁ…。真面目に取り組んでもあまりいいことがなさそうですね」

「そうだね。でも出さないと補修だから書いておいた方がいいと思うよ」


「分かりました。ありがとうございます」

「いいえ。お互い様…でしょ。気にしなくていいよ」



いつも枢様は、私に優しくしてくれる。
それは、私の思いこみでも自意識過剰でもなくて

藍堂さんや、早園さんを見ているとわかる(というか、藍堂さんがそう言っているから…)


なぜ優しくされるのか…
その理由は分かっている。

私に魅力があるとか、私の事が好きとかではない。


ただ…





ただあの時の失敗が、彼をそうさせているのかもしれない。

そして、その時に負った私の中にある傷が、彼を縛り付けている。

ただそれだけの事だ。



そこにあるのは…
ただの呪縛……
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