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□Voice
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暗闇の中
一人膝を抱えた人がいた

どうする事も出来ず
ただ見つめていた






Voice











呼んでいる
喚んでいる



『誰か助けて。
誰でもいいから。』



聞こえる
聴こえる



誰かが
泣いている





君は誰?
誰を呼んでいるの?



目の前の人は小さくて
綺麗な金の髪だった





助けて
助けて





顔をあげ
少年とも少女とも判断しづらいその人は
大きな蒼い瞳に涙をいっぱい溜めて


ひたすら“助けて”と

誰かを呼んでいた



見放す事も出来ず
ずっと見つめていると

その人はこっちを向いた



そうして
唇が動いた



『助けて。…―――――!』



途中からノイズがかかったように聞こえなくなった。



君は誰?
誰を喚んでいるの?





ねぇ―…











「楓っ!!!!」

「のわっ?!」


突然の美紗の大きな声に、楓は文字どおり飛びあがって眠りの世界から呼び戻された。


「いつまで寝てるの?授業始まるわよ。次移動教室でしょ。」

「あぁ!ごめん!なんか変な夢見てさ。」

「夢?」

「うん、なんか、変な夢。よく覚えてないけど」

「…あんた夢見るほど爆睡してたの?」

「…すいませんでした。」



何時もどおりの会話をしながら、楓と美紗は教室を出ていった。








呼んでいる
喚んでいる



あの時泣いていた君は



誰?













楓覚醒直前話(笑)
これは図書館に行く当日の話です。

楓ちゃんはよく寝る子です。
いつでもどこでも眠れる子です。
つまりアホの子なんです。
 

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