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□Beautiful World
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目が醒めたら、そこは、見た事もないような、綺麗な世界だった。








Beautiful World








「イーグル。もう起きていたのか。」


朝目が醒めて、ぼんやりしているところに、導師クレフがやってきた。
はじめは声しか聞いていなかったから、目醒めてその姿を見た時、とても驚いた事を記憶している。


「ちょっと、目が醒めてしまって。」

「そうか。」


微笑んだ僕に、クレフは柔らかく笑い返してくれた。隣まで歩み寄り、近くにあった椅子に座る。


「…調子はどうだ?」


目醒めたばかりの僕を気遣ってくれているのか、心配そうな蒼の瞳が僕の方を向く。
ランティスより少し深い色の、蒼。
例えるなら、限りなく澄んだ海の色だ。


「大丈夫ですよ。そんなに心配しなくても。」

「…そうか?」

「はい。」


笑顔でそう言っても、まだ疑うように僕を見ている。
顔は少年のようなのに、そこにある表情は大人そのもの。
さすがは『心が全てを決定する』世界だ。


心配するクレフをよそに、僕は外の景色に目を向けた。

朝陽が反射し、煌めいているように見える木の葉や、色鮮やかな鳥達がその間を飛んでいく。


あぁ、ここは本当に。


「美しい世界ですね。」


思わず口にしてしまっていた。
クレフの方を見ると、少し驚いたような顔をして、またすぐに柔らかな笑顔に戻った。


「そうだな…。本当に、美しい世界だ。」


その瞳は、喜びとも哀しみともとれない感情を宿していた。
見つめる先は、遥か彼方で。


…この人はきっと
僕よりずっとこの世界を知っているから
だから、こんな表情をするのだろう。



『本当』に美しい世界とは
『真実』という意味で


過去にあった
上辺だけの美しさではない。



「…なんて、僕が言える事じゃないんですけど。」

「ん?何か言ったか?」

「いいえ、何も。」


小さく言った言葉は、どうやらクレフには届かなかったようだ。
そのままクレフはまた、外の景色を眺めやる。





この世界が美しいのは
本当に美しいのは、きっと、とても強い願いがあったからだ。





『この世界を変えたい』という願いが。





一瞬、あの笑顔を思い出し、少し笑いが零れた。



クレフの方を見ると、同じ事を考えていたらしく、優しく微笑っていた。






…―願わくは
この『美しい世界』が

今ある鮮やかさを失わぬように―…
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