長編小説『CLESENT VOICE』

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翌朝、司が学校に着いてみると教室中転校生の話題で持ち切りとなっていた。久村もテンションを上げながら司に話しかける。
「司、知ってるか? うちのクラスに転校生が来るって話」
「あ、うん。知ってるよ」
仕掛け人は貢なのだから知っていて当たり前である。
「あれ? 貢はどうした? いつも一緒に学校来るのに」
「貢はて――」
貢は天界に用事がある、とつい口走りそうになり、司は口を塞いだ。一瞬、冷や汗が出てくるのを感じた。
「み、貢なら急用で家族と出かけてるんだ。いつ戻るかは分からないって」
「ふうん……」
久村は司に怪しむような視線を送る。
「全員いるなら席に着けよー」
いいタイミングで担任が教室に入って来た。それを合図に生徒達は一斉に自分の席に着いた。司は内心、担任に感謝した。
「えー、もう知ってる奴もいると思うが、今日から転校生が二人入ることになった」
「二人だってよ」
「女かなあ?」
「あたし絶対友達になろっと」
担任の台詞を聞いた生徒達は一層ざわついた。どうやら大半の生徒は転校生が二人だとは知らなかったようである。
「うるさいぞー。えー、じゃあ入って来てくれ」
皆は心を踊らせながら廊下に続く扉に目を向けた。しかし、司だけは不安で心が満たされていた。
そして教室に入って来たのは当然ながら学生服を身に纏ったフェニックスとフレイだった。
フェニックスは明らかにやる気などないような顔をしている。今目を合わせたら確実に睨まれるだろう。
それに比べてフレイは楽しそうにしている。足取りも軽く、顔には笑みが溢れていた。
「こちらが転校生の二人だ。んじゃ、自己紹介をしてもらおうかな。まずは君から」
担任に指示されてギョッとなるフェニックス。あからさまに嫌がっているのが分かる。
「あー、えーっと。……俺は転校生だ」
教室中がシンと静まる。
「あの……名前を言ってくれるかな?」
「名前? いちいち言わないといけないのか?」
(当たり前だろっ!)
司は心の中で叫んだ。
「俺は大野橋響。エ……じゃなくて、貢の遠い親戚だ。まあ、よろしく」
「じゃあ、次は君」
担任はフレイに言った。
「あたしは大野橋渚。よろしくね」
と、自分なりに可愛いげな格好を作ってみせる。フレイは男子に人気があるようでヒューヒューと口笛が聞こえた。
「響と渚の席は……廊下側の席が空いてるな。じゃあ二人共、あそこに座りなさい」
「へいへい」「はーい」
司のいる場所とは反対側の廊下側に二人は移動した。
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