短編夢

□あめふり
1ページ/1ページ



空が泣いていた
朝、良い天気だと思って元気よく家を出たのに…裏切られてしまった

ザーザーと音をたて降り続く雨に、私も泣きそうになる


傘なんて持っていない私に帰る方法などなく、学校の昇降口で立ち止まる
濡れて帰ってもいいのだが、布製の鞄に入った教科書が駄目になってしまうことを考えると…そんなことはできなかった

『雨、止まないかな…』

「この雨じゃ、止まねぇだろーよ」

頭上から聞こえた声に少し驚きつつ…私は顔を上げ、声のした方を向いた

『左之助さん…』

「傘忘れたのか?」

『はい』

「奇遇だな。俺も忘れたが…」

言いながら一本の傘を取り出した

「ここに、新八の傘がある」

『?』

「コレで一緒に帰ろうぜ」

『でも、永倉さんが…』

「新八なら大丈夫だ。ほら、行くぜ?」

『あ、待ってくださいっ!』

慌て追いかけると、左之助さんは私を傘の中に入れてくれて…自然と相合い傘という形になる

近くなった距離と、繋いだ手が恥ずかしくて、嬉しくて…真っ赤な顔で俯いた



あめふり


途中、永倉さんから電話がかかってきて…
こっぴどく叱られたのは…また別の話





[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ