短編夢
□あめふり
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空が泣いていた
朝、良い天気だと思って元気よく家を出たのに…裏切られてしまった
ザーザーと音をたて降り続く雨に、私も泣きそうになる
傘なんて持っていない私に帰る方法などなく、学校の昇降口で立ち止まる
濡れて帰ってもいいのだが、布製の鞄に入った教科書が駄目になってしまうことを考えると…そんなことはできなかった
『雨、止まないかな…』
「この雨じゃ、止まねぇだろーよ」
頭上から聞こえた声に少し驚きつつ…私は顔を上げ、声のした方を向いた
『左之助さん…』
「傘忘れたのか?」
『はい』
「奇遇だな。俺も忘れたが…」
言いながら一本の傘を取り出した
「ここに、新八の傘がある」
『?』
「コレで一緒に帰ろうぜ」
『でも、永倉さんが…』
「新八なら大丈夫だ。ほら、行くぜ?」
『あ、待ってくださいっ!』
慌て追いかけると、左之助さんは私を傘の中に入れてくれて…自然と相合い傘という形になる
近くなった距離と、繋いだ手が恥ずかしくて、嬉しくて…真っ赤な顔で俯いた
あめふり
途中、永倉さんから電話がかかってきて…
こっぴどく叱られたのは…また別の話