短編夢
□喜
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冬の弓道場はとても寒い
冷えきった床に外の空気
雑巾がけでおもいっきり走りぬけても、体はちっとも温まらない
ロードワークに出るのだって億劫になる
寒さはじわじわと体を蝕んでいくような気さえした
弓矢を持つ手が悴んで上手くいかない
朝練なんてしなければよかったと今更ながら後悔した
『失礼します…あ、梓くん!…よかった』
「先輩?」
制服姿にマフラーをして、バスケットを手に入ってきた先輩
夜久先輩とは違う艶やかな黒髪が揺れた
『おはよう!梓くん、今日も練習してると思って…これ差し入れ!今日は一段と寒いから』
「ありがとうございます!」
先輩の手から渡された温かいお茶と中華まん
体の中から温まっていく
「これ、先輩の手作りですか?」
『うん…おいしい?』
「とっても美味しいです!」
感謝も込めて頬にキスを落とした
頬を紅く染めて俯く先輩に心も温かくなる
「先輩一緒に登校しません?僕もう練習終わりにします」
『もう少しここにいたい…梓くんの弓見たいな』
「先輩のお望みとあらば喜んで」
それからゆったりと過ごしてしまって、始業ギリギリに僕たちは登校した
喜んで、朝
(12月20日の始まり)
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