短編夢
□嘘も方便、ですよ
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「せんぱーい!こっちです!」
『あ、梓くん!』
「遅いですよ…待ちくたびれました」
『ごめんなさい…』
「冗談です、先輩を待つ時間も好きですから…安心してください」
『もうっ!すぐ、そういうこと言う…』
梓くんは私が入部した時から、すぐにからかう
月子ちゃんには素直なのに…私には意地悪する
でも、それが梓くんなりの愛情表現なのも最近分かるようになった
意地悪しても、本当は優しさで溢れてるってことも
ほら、今だって…手を繋いでくれてる
「まったく…こんなに人が多い日を選ばなくても良かったのに」
『仕方ないよ…みんなの予定が合うのは今日しかないし、次の機会にしたら今年はお花見できなくなっちゃう』
今日は息抜きにと部長が提案して、弓道部みんなでお花見をする
今、私たちは2人で待ち合わせ場所に向かってる途中だ
「僕は先輩と2人きりが良かったんです!」
『…また今度、ね?』
「……先輩、僕良いこと思いつきました」
いつもの意地悪する時と同じ笑顔を浮かべて…梓くんは電話をかけはじめた
「もしもし…木ノ瀬です。すみません、人が多くて迷っちゃって……はい。あ!先輩なら一緒ですよ……ちょっと人混みに酔って休んでます。はい、分かりました…それじゃ、また後で…失礼します」
『あの…梓くん?』
「はい」
『今、部長に電話したの?』
「そうですよ」
『道に迷ってないし』
「はい」
『私、酔ってない…』
「はい」
『……嘘つき』
嘘も方便、ですよ
(これで、心置きなく2人きりになれますね)
この後、梓くんと2人でお花見を楽しんでる途中に、宮地くんに見つかって怒られるのは…また別のお話