短編2

□横顔と竜崎くん
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いつもの学校の帰り道。
あたしの隣には、背が高くて、でも猫背な竜崎くんの姿。

──今日は何を話そうか?

何気なく見上げた竜崎くんの横顔に、何故だか心臓が高鳴る。
「竜崎くんってさ」
「はい」
「女の子みたい」
「何ですかそれ」
呆れたように竜崎くんは笑う。
「綺麗って意味だよ」
「私が…ですか?」
高くてすらりとした鼻筋に、薄い唇、顎のライン、白い肌に細いシルエット、長い指から艶のある爪先までを目で追いながらあたしは答える。
「羨ましい」
「貴女も十分綺麗ですよ」
「あたしは、違うよ」
「何故です?」
「だって」
竜崎くんはひょい、と体を屈め顔を覗き込んでくる。自然に近づく顔の距離。動揺がばれないように、あたしは冗談めかして話を続けた。
「竜崎くんみたいに、鼻高くないし」
「体も細くない、ですか?」
「ちょ……!ひどっ」
竜崎くんはくすくすと楽しそうに笑っている。その顔はもう前を向いていてあたしを見てはいない。
少しだけ、寂しくなるあたしの心。
下を向いたあたしの耳に竜崎くんの声が響いた。
「でも私は……」
「?」
「貴女のそうゆう所、好きですけどね」
「ばっ……もう遅いわ!」

いつもの学校の帰り道。
あたしの隣には、背が高くて、でも猫背な竜崎くんの頬を染めた横顔と、愛の告白。

*****
そんな、彼のいる帰り道を楽しんで頂けましたら、わたししあわせ。
08.10.25 優

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