短編2

□パピコ
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「あっ竜崎。今日はもう良いの?」
濡れた髪をわしわしと拭きながら彼女がリビングへやって来た。
「はい。いいお湯でしたか?」
竜崎は反対側のソファーに腰を下ろした彼女の隣に素早く移動すると、まじまじと彼女を観察し始める。
若干鼻息が荒い。
「う、うん。竜崎も入って来たら?」
「貴女が一緒に入ってくれるなら入ります」
「観たいテレビあるもん」
「私とのバスタイムよりテレビを優先させるんですか?」
「じゃテレビ観てから入ろうよ」
「今がいいです」
「やだ」
「何故です」
「竜崎、絶対エッチな事するもん」
「エッチな事ってなんですか?ちゃんと言ってくれないと分かりませんね」
わざとらしく耳元で囁く竜崎に彼女は顔を真っ赤にする。
「とにかく嫌だから!」
彼女はプイっと竜崎に背中を向けキッチンへ行ってしまった。
「つまんないです」
ソファで指を加えていると彼女はすぐに戻ってきた。
「全く、そんなんでいじけないでよ」
呆れた口調で言いながらも、竜崎と同じソファへ座る。
気を良くした竜崎は嬉しそうに微笑み彼女の腰に腕を回し抱き寄せた。
「ちょっと…」
「いい香りがします。食べたいです」
竜崎が彼女の胸に顔を埋めようとしたその時。
「ひいっ」
冷たい物がうなじに当たり竜崎は首をすくめた。
「あははっ変な声!」
「なっ何ですかそれ…」
「パピコだよ」
彼女の手にはチューブに入れられたアイスが握られている。
どうやらキッチンに行った時、持ってきたらしい。
楽しそうに笑いながら彼女はパピコをチュウチュウと食べ始めた。
何の変哲もないこの行為が、彼にとっては大きな起爆剤となる事を彼女は知らない。そして、
「貴女も随分と厭らしい人ですね」
「は?」
「そんなに強く吸ったら出ちゃいますよ」
「竜崎さん?」
「はあ、限界です」
おもむろに立ち上がると竜崎は服を脱ぎ始めた。
「ちょ…脱ぐならお風呂でっ」
「貴女が悪いんですよ?」
「え?何?」
「そんな物を食べるから…」
「欲しいなら半分あげるって」
「いえ…食べるのは貴女でいいんです」
「どういう…」
「私のパピコも吸って下さ…」
竜崎がジーンズのジッパーに手を掛けた瞬間、

ビッターン!

彼女の顔面ビンタが飛び、竜崎は気を失った。
「こっの変態っ!」

その後、彼女が竜崎の前でパピコを食べる事は二度と無かったという。

「ワタリ。パピコを一箱、発注しておいて下さい」

END
*****
いや、最初は彼女のパピコを竜崎が欲しがって仲良く半分こ☆
みたいな甘夢だったんです。
なのに竜崎が勝手に…(人のせい)

08.5.15 優

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