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□先輩と
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基本的に女の先輩っていうのは苦手だ。昔から。やけに高圧的なのが多いし、キャーキャー騒いでうっせーのもオレは勘弁して欲しかったから。騒がしいのはあいつらだけで十分だと思うけど、そう思っているオレを見てなにか勘違いしているのか、騒がしい奴らが(数人で)寄ってくる。時には中学時代の先輩だったり浜田の友達だったりしたけれど、どれも同じようにうるさい奴らだった。やけに構ってくる。しかもそのまま仲間とおしゃべりを始めたりして。オレはそれがウザったくてたまらなかった。
そんなオレは近頃、ある女の先輩によく絡まれている。ちなみに三年だから浜田の知り合いとかでもなく、だ。

「泉くん、おはよ」

ふわりと笑う先輩を見て自然と頬が緩むのが常だ。この笑顔に、なんだか安心する。

「、はざす」
「朝練頑張ってねー」
「ハイっ」

にこりと笑ってオレの背中を軽く叩くと、先輩はそのまま校舎へ吸い込まれていった。オレはそんな後ろ姿を見送ってから、再び自転車を押しつつ歩き出した。

いつだったっけ。あの人に話し掛けられたのは…えっと、確か2ヶ月くらい前だ。「泉くん」なんて声をかけられて、またかと思って振り向けば、柔らかい笑顔が迎えてくれた。「野球部の泉くんだよね?」そんな台詞に全くの媚びも感じられなかったことに、その時のオレはひどく感動した。「いつも練習見てるよ。頑張ってね」応援してます、なんてはにかまれた時にはもう我慢ならなくて、さっさと立ち去ろうとした先輩を引き止め名前とクラスと、メルアドまで聞いてしまったのだから自分でも驚いた。

「イーズミー」
「あ?」
「ぼーっとしてんなよ、先輩来てンぞ」
「お、おお」

それからというもの、最低でも朝・校舎内と、一日に二回は会うようになった。最近は忙しいだろうにわざわざオレのクラスまで来てくれるまでなった。クラスと野球部の奴らにはたぶんもう勘づかれてる。

「ごめんね、なんか邪魔したかな」
「や、全然」
「よかった!そんでね」

次の試合って、いつぐらいかな。
そう聞かれた時は、自然と覚えていただいたいの日程が口から零れ出ていたのだが、そういえばと疑問に思っていたことを音にして出してみた。

「先輩って、野球好きなんすか?」
「ん?好きだよ」
「なんで?」
「なんでもなにもないよー」

ふわりと苦笑した先輩に、なにか悪いことをしてしまったような気がして、スンマセンと謝れば、やっぱり先輩は優しくわらうのだった。

「あのさ泉くん」
「、なんすか」
「野球も好きなんだけどね、やっぱりあたしは」




スイートトラップ



泉くんがすきなんだよ。
言うだけ言ってさっさと自分の教室に帰ろうとする先輩を引き止めて、オレは返事を告げた。





きっと泉くんは癒されたかったんだよね、ぴったりな女の子じゃないか(←)
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