Let's end it here, with no regrets.

□09
1ページ/1ページ






「んでこれがこの構文だから、そしたら訳せるだろ」
「ああ!」


昼休み、三年の教室で二年のしかも女子生徒が英文を睨みつけている光景は、オレがそいつと向かい合ってああだこうだと話していなかったら異様だろう。しかしオレがいてもやはり珍しいのか、教室内にいた人たちの視線のほとんどがこちらを向いていた。視線を浴びている本人は気付かず英文と戦っている。


「えっと、このwhatが、」


こいつは理解が早い。一度教えればだいたいのことはわかるようになるのだが、これがわからないと言うことは授業を聞いていなかったのだろうか。


「あー、ありがとうございました!助かりました!あっ、何か奢りますよ?」
「いーって。準太や利央ならまだしもお前から金とるなんてみっともねェからさ」
「あー、確かに」


そいつは笑いながら同意した。たぶん『準太や利央ならまだしも』に同意をしたんだろうけど。そういえば慎吾が、素直なところが魅力なんだとか言ってたな。まあそうは思う。マネージャーとしてもいい働きぶりだし。


「あ、準太や利央っていえば」
「なんですか?」
「最近仲いいよな、お前ら」
「うーん。利央がうっさいっていうか」
「はは。で、お前はどうなんだ?」
「どうって…」


そいつはそこで悩むような仕草をした。んーと少し唸って、笑顔でオレに向き直った。


「わかんないです」


それは本当にわからないのかもわからないような柔らかい微笑みだった。でもきっと言葉通り、まだ結論は出ていないのだろう。オレは後輩の恋愛どころか同学年の恋愛さえわからないから、そういうのは詳しくない。もしかしたら利央や準太じゃなくもっと違う奴が好きなのかもしれない。推測ならいくらでも出来るけれど真実には辿り着けそうにない。だからその話はそこでやめて、二人で購買に向かうことにした。









『誰も好きじゃない』じゃなくて『みんな大切』なんだろう


(まだまだ時間が必要だな)









0303







[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ