イチオリ1
□酒は秘薬、恋は魔法
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「くっ〜ろさき〜くんのせなか〜あったか〜い」
「そりゃさっきまであんだけ酒のんでたんだからあついだろう…しかし井上…そうとう酔ってんな」
酒は秘薬、恋は魔法
「ぜ〜ん〜ぜんよってなんか……ないっすよ」
「途中で言葉止まってんだろうが…」
高校を卒業して早二年
卒業後はみんなそれぞれの道に進んでいった
年末休みに皆で久しぶりに集まり皆二十歳を向かえたので今回は居酒屋に集まってどんちゃん騒ぎをしてたんだが皆殆んどがちゃんと酒を飲むのが初めてだったので自分のペースが分からず大抵の奴が泥酔に近い状態になっちまった
何とか泥酔にならなかった俺とチャドと水色で手分けして泥酔している連中を送り届けることになり…
チャドが石田と小川とたつき
水色が啓吾と本匠
俺は一番泥酔している井上
ほかのやつらは自分で歩けるからまだいいが井上は酔っぱらいすぎて歩けなくてしょうがないので今は俺がおんぶして送り届けている所である
「る〜んるんくろさきく〜んといっしょにかえれてう〜れし〜いな〜」
「はいはいよかったですね」
「むぅ〜はんのううすいですぞくろさきくん!」
今にも背中が反応しそうで怖いんだよ。なんせ井上のとくも……胸が背中にあたってんだから…
「くろさきくんは私といっしょでうれしくないの!」
「やけにからむな…はいはい嬉しいですよ一緒にいられて」
ほんとは凄く嬉しいなんせ井上のことが好きなんだから
高校三年位から急に意識しだして何時も一緒にいたはずなのに急に胸が苦しくなったり井上を見るだけで心臓が壊れたかと思うほど血圧があがり一度だけ倒れたことがあるくらいだ
「私もうれしいよ〜」
「はぁ…人の気もしらないでノンキに…」
「くろさき君なんかいった〜?」
「な〜んにも」
高校卒業のとき告白しようとしたが…石田に先を越されちょうど告白場面に出くわしてしまった
結果は未だに聞いていない…聞くのが怖かった…石田と井上が付き合ってるなんてわかったら俺はきっと狂ってしまう
「くろさき君かのじょ出来た〜?」
「いきなりディープなこと聞いてくるな、相変わらず一人ものだよ」
「そうなんだ〜……くろさき君のど渇いた」
「はい?!…じゃそこの公園の自販機でなんか買ってくるからおとなしく近くのベンチに座ってろよ」
女王さまに一言放ち自販機にむかいよいさましにお茶を買う
「ほら冷たいお茶、よいが醒めるぞ」
「ありがと〜」
井上は旨そうにゴクゴク勢いよく音を立てて飲んでいる
「ぷは〜美味しい」
「ならよかった」
「ありがとうくろさき君」
「どういたしまして」
そう言い終わると暫くの間二人は沈黙してしまう
でもその状況は嫌なものではなく沈黙が逆に心地よいものに感じた
「………くろさき君」
「んっ?なんだ?」
「何でかのじょつくんないの?」
なんか今日はやけに積極的にあれこれ聞いてくるなぁ…井上はもしかして絡み酒か?
「もしかして…私とおなじで忘れられない人がいる…とか?」
「私と…同じ?井上石田…は?」
「なんで石田君?私石田君とはなんにも…あぁー!くろさき君もしかして卒業式の日に…石田君の告白…見てた?」
「あっ…と……ひ、人を捜してたら…たまたま見付けて…それで…な」
井上を探してた…なんて面と向かって言える勇気も自信も持ってなく言葉を濁すのに精一杯だった
「そっか………私、石田くんのことフッちゃったんだ。」
「そっか…」
「ほかに好きなひとが…いたから」
ドックン…
ドックン…
井上に好きなやつがいる。それをきいただけなのに心臓が目眩ぐるしく動き全身を熱く苦しめる
井上に好きなやつがいたからって今さらなんだってんだよ。今さらどうすることも…出来ないのだから
怖じ気付いて逃げ出した俺に今さら井上に告白なんて…