リクエスト1
□また廻り会う日まで
1ページ/4ページ
あの卒業式から7年の月日が流れた…皆それぞれの進路先で頑張っている。僕も医者になり今は研修期間も終わり忙しく働いている…
そんなある日、同じく医者になった良きライバルから告げられた事から始まる話である
また廻り会う日まで
「結婚!?井上さんと?」
「当たり前だろ!ほかにいるか!」
久しぶりにあった良きライバル?の黒崎に珍しく飲みに誘われ二人で飲んでいたら急に言われ…
それはいずれは訪れることで…
予想をしていなかったわけでもなく…
でも…
僕の心の中で何かが痛むのも事実で…
「プロポーズはどっちが?」
「俺からに決まってんだろ。さすがに男からしないとなこうゆう事は!」
「そうか、なら良かった。いつものようにまたヘタレて言えないんじゃないかと心配したよ」
「相変わらず嫌味ったらしい奴だな」
「友を心配しているだけなんだが。」
「よく言うよ…たく」
しかし、こんな会話ができるくらいしか痛まないのもまた事実で…
「お前はどうなんだよ石田」
「何が?」
「何がって…こんな話してんだから結婚に決まってんだろ。聞く話によると小川といい感じなんだってな、どうなんだ?」
「僕らはマダマダだよ。でもおかげさまで仲良くやってるよ」
「ふ〜ん、なら良かったよ。井上も心配してたから。」
小川さん…
彼女が僕の心の痛みを軽くしてくれた…
卒業後、僕はやる気というものが全く無く時堕落に大学生をしていた。そんな僕の前にあらわれたのが…
小川さんだった…
彼女が僕と同じ大学だと知らなくて現れたときは凄く驚いた…
それから彼女が時堕落な僕のことを色々と世話焼きをしてくれて…
そんな生活が一年を過ぎた頃に小川さんから‘好きです’と告白された。
彼女の話では高校一年からずっと僕のことが好きだったそうだ。
そして彼女は僕の井上さんへの想いに気付いていた。後から聞いたら井上さんを見ている僕を見ると胸が切り裂かれるような気持ちだったそうだ。
僕は始めは断るつもりだったが彼女の一言で気が変わった…
『織姫の事、無理に忘れてなんて言わない。私だって石田君のこと忘れろって言われても絶対無理だし…ただ……私の事も石田君の心の中に入れて欲しいから…だから…』
そう言って彼女は黙ってしまった
この時僕は始めて気付かされた。
無理をしてまで忘れる事は無いと…
そう解らせてくれた彼女に感謝した…だから付き合ったわけでも無いが、付き合い始めはなかばリハビリなようなものと考えていた
何とか前に進みたかったからこんな風に思っていた…でも気が付けば井上さんよりも彼女の存在のが僕の中で大きくなっていた
「黒崎、」
「ん、」
「おめでとう」
「へっ、ありがとよ」
二人して照れ笑いしてしまった
「結婚式の日は決まっているのか?」
「いやまだだ、これから井上とよく相談して決める事になってんだ」
「そうか、日にちが決まったら知らせてくれ。」
「心配すんな、ちゃんと招待状送るから、なんなら友人代表でスピーチでもするか石田」
黒崎が笑いながら話している
「悪いが、多分出来ないだろうな。その頃にはもう…日本にいないだろうから」
笑っていた黒崎が笑うのを止め真剣な眼差しで僕を見てきた
「どうゆう意味だ…」
「まだ小川さんにしか言ってなかったんだけど…半年後にアメリカの病院で働くことが決まったんだ、それにもう日本に帰って来ないと思うし。…だから二人の結婚式には出れそうもないから日取りが決まったら知らせてくれ、その日に何か記念品とメッセージでも送るからさ」
「そうか…お前が決めたんだから仕方ないか…わかった、日取りが決まったら電話するよ……石田」
「何だい?」
「頑張れよ」
「言われなくとも頑張るさ」
二人とも照れ笑いをしてしまった。
黒崎とこんな話をするなんて高校時代では想像もつかなかった
人を変えるだけの時が流れた…それを深く感じさせる事でもあった
それからたわいのない話をして夜も遅くなったので解散になった