NL部屋
□愛の手料理
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「はぁー…イイ匂い、今日はカレーか?」
夕暮れ時。
安宿の台所へ立ち、今晩の夕食の準備をしている本日の食事当番のアニス。
そこへやってきたのは、ガイと共に先程まで修行に勤んでいたルーク。
腹の虫を盛大に鳴しながら。
「そーだよ〜。今日はアニスちゃん、大佐のリクエストに答えちゃいましたっ☆出来るまではもうちょっとかかるよ?」
つまみ食いはしないでよね〜。そう釘をさしておくのは忘れずに。
ちぇ、と悪態つきながら黙々と料理を続けるアニスの側にやってきて、その手元を覗く。
「なんか手伝ってやろうか?」
「…なんで?」
キョトンとした表情のアニスに、ルークは少しムキになる。
「…いいだろ、たまには。邪魔だってんなら、あっち行ってるけど?」
その照れた様顔つきとぶっきらぼうな言い方に、アニスは驚きとほんの少しの喜びが入り交じった表情で相手を見た。
「フーン、…まぁいいけど〜。じゃあ、そこの食器取ってくれない?」
「ああ、分かった」
拗ねているのかと思いきや、意外と素直な反応にアニスは内心ほくそ笑んだ。
「終わったぜ。次は?」
「んっと、じゃあ〜…コレ!味見して。」
ハイ、と笑顔で差し出されたスプーン。
それを受け取りかけて。
「って、それニンジンじゃねーかよ。無理だっつーの!」
美味しそうに湯気が立つカレールーと共に、ルークが苦手とする食材のカケラが赤い顔を覗かせていた。
「なによぉー。こんなのちょっとじゃん!アニスちゃんがせっかく作った料理が食べられないっての!?」
「そーゆーワケじゃねーけど…、無理なモンは無理なんだよっ…!」
グイグイと押し付けられるスプーンを避けつつ、ルークはすでに逃げの体勢に入っている。
「しょうがないなぁ〜」
そこまで嫌なのか、とアニスはわざとらしく溜め息を吐いた。
ほっとしたのもつかの間、再び口元に向けられるスプーンにルークは目をむいた。
「アニスちゃんが食べさせてあげる。ハイ、あ〜んv」
「へっ!?え、いやっそれは…、んぐっ!!?」
たじろいだ所をアニスはすかさずそれを口の中に放り込む。
ルークはしばらく苦しそうに口をモグモグさせていたが、そうもしていられず、唾液と一緒に喉の奥に流し込んだ。
「なにすんだよっ…!」
飲み込んだと同時に怒り出したルークの顔は、子供の様に食べさせられた恥ずかしさからか赤く染まっている。
「ちゃーんと食べれたじゃん!ニンジン」
てへ、と満足そうな笑顔を向けられてルークは何も言えない。
「これも愛の力?」
「なっ、馬鹿じゃねーの!?」
あながち外れていないその答えに、ルークはそっぽをむいた。
バレバレなのは分かっていたけど。
end.