NL部屋

□sweet and sour.
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* * *


アニスの思惑通りに、宿屋を後にした俺達は、その目的の店まで歩いていた。



「…はぁ〜」

「なんですの?その溜め息。私と一緒なのが不満でしたら、無理に来なくても良かったですのに」

「いや…そういう事じゃなくてさ」

アニスの俺達をくっつけようとする魂胆が見え見えで。
逆に気が引けてしまう。

こういうのって、世にいうデートってヤツだよな。

まぁ、なんだ。ナタリアとは実際付き合ってる訳だし、別におかしな行為じゃないけど。

そう考えてみると、こうして2人で出かけるのも久しぶりだ。

むしろこうしてお膳立てしてくれたアニスには感謝してもいいのかもな。


「…手、つなぐか?」

店につく間までだけど。

そう言って腕を差し出してやれば意外そうなナタリアの顔。
俺、そんなおかしい事言ったか?

「まぁ。…ふふ、貴方がそんな事をおっしゃって下さるなんて。…なんだか、子供の頃の様ですわね。」

「そうか?」

ナタリアと手をつなぐなんて、別に大して珍しい事じゃない。

恥ずかしいからみんなには見られない様にはしてるけど。

ガキの頃は、事あるごとにナタリアにせがまれてこうして手つないでたよな。

けど、それ以前。
俺が生まれる前は、アッシュともこうして手をつないで歩いたんだろうな。

嫉妬って訳じゃないけど、決して気分がいい訳でもない。

俺が、俺だけが知らない、アイツとナタリアの過去。

「…心配なさらないで。今は、貴方だけですわ」

俺の心を読んだ様なタイミングでナタリアが声をかけてくる。

その一言で俺が抱えているモヤモヤが少し晴れた気がした。

ナタリア自身、アイツとの繋がりを割り切った訳じゃないんだろうけど、今は俺を選んでくれた事が嬉しい。


「急ごうぜ。なんか俺、ハラ減った」

「あら。私もですわ」


くすくす笑い合いながら、つないだ手をより一層深く絡めた。




end.
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