NL部屋

□あたたかな手
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戦闘中、小さなミスを犯したせいで腕に怪我を負った。
命に関わるようなものじゃなかったが、大事をとって今日は町で一泊することになった。
安価な宿屋の安そうなソファーに座りながら、同じく浅く腰をかけたナタリアに治療を受けている――それだけならいいのだが、戦闘中にミスして怪我をした事に対してのお叱りのオマケ付きだ。

「――ですから、あれほど注意なさるようにと申し上げましたのに」
「だから悪かったって…、次からは気を付けるから」
延々と繰り返される小言のオンパレードに溜め息が漏れた。
先ほどから同じような会話のやり取りにいい加減飽き飽きしている。
治療中でなければ、多分逃げていた。
自業自得だというのに、一体誰のせいでこうなったと心の中で責任転嫁しようと口を開きかけ、その言葉を飲み込んだ。
またひとつ溜め息が零れる。
ナタリアの自分の腕に包帯を巻き付ける指が微かに震えていたからだ。
「わたくし、本当に心配しましたのよ」
「…もうしねぇって」
キュ、と結び終えた包帯の上から腕を包まれた。

「……っ」
眉をしかめたのは、決して傷が痛んだわけじゃない。
傷に障らない程度に力を込められると、震えと共にナタリアの手のひらの温もりが腕へと広がる。
そこからはナタリアの本気で心配してくれている様子が伺えた。
その手を振りほどいて、驚きに見開く瞳の上へと軽く口づけた。咄嗟に逃げようとする腰を引き寄せ、その身体を強く抱き締めた。
「心配かけて……ごめん」
小さく、ナタリアだけに聞こえる声で呟けば、目前にあった肩がピクリと震えた。
「……もう、怪我なさらないでね」
そろそろと躊躇いがちに背中に回された腕からも、少し高めの体温が伝わってくる。
その温かさに酔いしれながら、そっと目を瞑った。


End.


(長髪ルーク?)

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