PxL

□あさのひかりにつつまれて
1ページ/1ページ

――夢を見た。

過去、仲間と旅をしていた頃の

苦しくて、辛い。あの頃の記憶――





「‥‥‥?」

小鳥の鳴き声がする。

うっすら開いたカーテンから差し込んだ光が眩しくて目が覚めた。

さわやかな朝の始まりの筈なのに、なんとなく気分がすぐれなくて再び布団の中に潜り込んだ。

ふと、隣りが気になって目をやると、穏やかな寝息を立てている陛下の姿があった。

ほぅ、と息を吐きその安らかな眠りを邪魔しないように、ほんの少しだけ距離を縮めて目を閉じた。

「…泣いているのか?」

ルーク、と名前を呼ばれ少し驚いた。
たった今まで目を閉じていた筈の人物を見ると、やはり目は瞑ったままで、なんだ寝言かと苦笑すれば。

もう一度呼ばれ、その腕に抱き寄せられた。

「陛下」

なんだ起きてたのか。
狸寝入りなんて人が悪い。
流石、ジェイドの親友だ。
そんな言葉ばかりが頭に浮かんできて、自分が泣いていた事さえ一瞬忘れた。

「夢を見たのか?」

「はい。多分、どんな内容だったかは、あんまり覚えてないんですけど…」

まるで小さな子供にする様にずっと背中を擦ってくれている陛下。

いつまでたっても子供扱いだけど、その温かい掌が今はとても嬉しい。

今だけだから。
そう自分に言い訳して、自らも陛下の背中に手を伸ばす。

そうすれば抱き締める腕にも更に力がこもる。

そんな訳でイヤって程抱き合った後、陛下の顔を見れば心配そうに眉を寄せ、温かく微笑んでくれた。

「大丈夫だぞ。俺もお前も、ちゃんと今、ここにいる」

「はい…っ」


こうやって自分から歩み寄れば、貴方はいつだって気付いて応えてくれるんだ。



end.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ