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□ひだまりのなかに
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自分の居場所はここにあるんだって知ったから
だから帰ってこれたのかもしれない。
* * *
世界に平穏が訪れたにも関わらず、相変わらず多忙な日々を送っているマルクトの現皇帝。
暇を見つけては忙しい職務の合間をぬって構ってくれるのだが、最近はあまり会っていなかった。
皇帝という立場上、それが仕方がないのはルークもよく分かっている。
それなのに、この人はルークの為ならと、仕事もそこそこに、職務室からその姿をくらませてしまう。
とはいえ、決しておろそかにはしていない仕事っぷりにルークは感心するばかりだ。
「いい天気だなぁ〜」
宮殿の中庭にある芝生の上に寝転んだピオニーは、青い空を眺めながら眠そうにあくびを漏らした。
同じくその傍らに腰を下ろしたルークは、その顔を見て苦笑した。
「眠いなら寝ていいんですよ?」
なんとかここに意識をつなぎ止めようとするピオニーに、愛しさに似た感情が溢れ出す。
「いやだ。せっかく会えたんだ…、寝たくない」
なんて、子供じみた事を言って困らせる大人。
「…余り無理をしないで下さい」
ここのところ働きづめだった様だから、疲れが溜まってたんだろう。
ずっと側にいた訳ではないので、詳しくは知らないが。
「また、バチカルへ戻るつもりなのか?」
「いえ、あっちでやるべき事は全部終わらせてきましたから、しばらくはこちらでお世話になります」
そう言えば和らぐピオニーの表情。
「…そうか」
その目は何か言いたげだったが、今は目の前の眠気に負けた様にルークの腕を引っ張り、その腕の中に抱き込んだ。
「お前も、寝ろ」
くすりと漏らした笑みはどちらともなく。
あたたかな陽気に誘われて、眠りの世界に落ちていった。
end.