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□おもいでとなる
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そして、迎えたルークの成人の日。
バチカルでは、本人を抜きにした成人の儀が行われたはずだろう。
ピオニーはもしかしたらという期待を抱いていたが、それが叶う傾向は見られず、一日は過ぎていった。
「はぁ…」
溜め息の数ばかりが増えていく。
しかし、こればかりはどうあっても割り切れるものではない。
夕暮れ時が近付き、次第に影を落としていく町並み。
それと共に、自分の心までもが暗く染まっていくのを感じ、ピオニーは椅子から立ち上がった。
どうせ、この時間なら誰も見てないだろ。
外の空気を吸いにいくべく、ピオニーは部屋を抜け出す事にした。
* * *
「今日、は夕焼け…か」
グランコクマの町並みを歩きながら、空を見上げるピオニー。
あの子供がいなくなった日から、ピオニーは空を見上げる事が増えた。
そこからルークが帰ってくるなどと信じている訳ではないが、見ていれば気分が安らぐのだ。
そして、また頑張ろうと思える。
今までだって、なんとかやってこれたんだ。
「…どうせなら、とことん待ち続けてやるさ」
一国の主としてじゃなく、一人の人間として。
たとえ何年経とうと待っててやる。
やはり外に出て来たのは正解だった、とピオニーは思った。
後で、ジェイド辺りに小言を言われるだろうが、今は少し気分がいい。
「さて、帰るとするか。」
自分の気持ちに決着がついた所で、ピオニーは元来た道へと歩き出した。
その時だった。
「陛下」
後方から届いたその声に、ピオニーは一瞬聞き違えかと思った。
しかし、それは紛れもなく待ち望んでいた人物のもので。
偶然なんてものはない。
出会うべきして出会って、そしてまたこうして再会する事が出来た。
「――ルークっ!!」
夕焼けの中で、2つの影が重なり合って溶けた。
end.