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□おもいでとなる
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それから、2年という時が過ぎ、ピオニーは相変わらず忙しない日々を過ごしていた。

それでも、ルークの事を忘れた日は一日もなかった。


ルークの成人の日が近付き、それでもなお、彼の生還を信じ続けているピオニー。


「仮に、ルークが戻ったとしても、それは貴方の知る“ルーク”ではないかもしれませんよ」

「それは解っているつもりだがな」

彼の幼馴染みとしてジェイドは一つ忠告をする。

信じる心。
それが大きな力となる。
しかし、それが間違った方向へ進むこともある。


(そろそろ、頃合か…)

少し早いかもしれないが、ルークとの約束だ。
ジェイドは重い口を開く。

「陛下。貴方にルークから伝言を預かっています。」

その瞬間、ピオニーの顔つきが怪訝なものに変わる。

「ルークから?どういう事だ、ジェイド?」

「彼に頼まれていたんですよ。‥自分が成人の日を過ぎても戻らないようなら、陛下に伝えて欲しい、とね」

あれは、ルークと別れる寸前だったか。
自分はもう陛下に伝える術に持ってないから、と頭まで下げられた。


全く嫌な役を押しつけられたものだ。
片手で眼鏡のフレームを上げながら、ジェイドは息を吐いた。


「“陛下、どうか幸せになって下さい”‥‥確かにお伝えしましたよ」

後は彼らの問題だろう。

ジェイドはその場を後にし、残されたピオニーはその言葉の意味を計り兼ねていた。


「‥待つな、という事か?」

幸せになる


ルークがここにいないのに?


――俺は、

お前の事を


「…っ、愛しているんだ…っ、ルーク…!」


呟きと共に零れ落ちた雫が床にいくつかの染みを作った。
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