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□せつなくて
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気付いたら陛下の身体が近くにあって、その真剣なまなざしが俺を見つめてくる。

胸の辺りが急に苦しくなってきて、余りの恥ずかしさに息すらまともに出来ない。


けど、頭のどこかに冷静な自分もいて。

切ない、っていうのはこういう事をそう呼ぶのか。


「俺なんかでいいんですか?だって、俺…」

レプリカだし。

「さっきもお話しした通り、俺は音素の乖離でいつ消えるか、分からない身体で…」

「それがお前が俺を好きな事と何か関係あるのか?」

指摘されて、とっくに答えなど出ている筈の自分の気持ちについて考えてみる。

っていうかそれ、前提なのか。
相変わらずの自信家。



「違うか?」


「俺は…その、陛下が…」

もう言っちまえ!



「そっちの“ルーク”とあんまりにも仲が良いのが少し羨ましいです…!」

今はこう言うのが精一杯だ。

陛下が悪かった、と笑いながら、抱いていたブウサギルークを開放した。

その代わりに俺が陛下の腕の中に収まる事になる。

「これでいいか?」

向き合わせで抱き締められて、陛下の体温と鼓動の音が直接伝わってくる。

緊張してるのは俺だけじゃないんだ、と安心した。



そんな俺達の様子を伺う様にブウサギルークのじっとりとした視線を横から感じる。


なるほどコイツは確かに俺だ。
お互いに陛下の事が好きだったのか。
そりゃ嫉妬もするよな。

お前には悪いけど、今はちょっとだけ優越感。
いいだろ?お前はいつも陛下と一緒にいられるんだから。



「陛下」

ぐっと前へ体重をかけて陛下の胸に顔を埋めれば、上から温かい手と口付けが降ってきて。


「…ん?」




ええっと、こういうのってなんて言うんだろ。



ああ、そうだ。




「幸せ、です。」



例え俺がこの世から消えていなくなる日が来るんだとしても



その時まで、少しでも長く…。




end.
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