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□やさしさが
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< Luke Side >
オールドラント全域に及ぶ障気の危機。
俺の超振動で障気を中和?
一万人のレプリカを犠牲にして?
『貴方はまだその手を血で染めるつもりですか?』
本当は、やりたくない。
けど、アッシュを死なせる訳にもいかない。
本物じゃない。
レプリカである俺がやるべきなんだ。
だけど、
「…はぁ〜」
さっきから出てくるのは溜め息ばかり。
聖堂の前。
一人でいるとマイナスな思考ばかりが浮かんでくる。
この星に住む大勢の人。
俺の大切な人達。
両親。
仲間。
…それから、
「…ピオニー陛下」
その名前を紡いだ瞬間、今まで迷っていた気持ちに決着がついた。
貴方を
みんなを死なせるわけにはいかない。
間違ってるかもしれない。
けど、俺だってもう誰も失いたくないんだ!
「ルーク」
空耳かもしれない。
今、一番俺が聞きたかった声だなんて。
後ろから抱え込む様なその腕が伸びてきて、あぁ…幻じゃないんだな、って実感した。
「すまない……」
今まで聞いた事もない様な弱々しい声。
前を向いてたから、後ろにいる貴方からは顔が見えなくて、本当によかったと思う。
今、すげー情けない顔してると思うから。
こんな状況なのに、嬉しいって‥なんだろ?
回された腕に遠慮がちに、手を添えて。
「…陛下」
呼べば、後ろにいる存在がビクリと震えた。
肩を掴んで向き合わされる。
ゆっくり近付いてくるその綺麗な金と蒼を眺めながら、抵抗する必要がないな、と目を閉じた。
初めての陛下とのそれは涙の味になってしまったけど。
「世界の為に、死んでくれ」
貴方の優しい嘘が、今はなによりも有り難かった。
せっかくの俺の決心を鈍らせないでくれるから。
end‥