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□なにげない
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その日の宮殿内はなにやら騒がしかった。

またあの皇帝が何かやらかしたんだろうか?
そんな疑惑を抱きながら俺達は陛下の部屋へと向かった。

「陛下。この騒ぎ‥何かあったんですか?」

「お。ルーク!いいところに来てくれたな。早速だが頼みがある」

陛下のその爽やかな笑顔に嫌な予感が走る。
それは側にいた仲間達も同じ様で、俺と同様の目を陛下に向けている。




* * *


「…全く、こんな事になるなんてなぁ」

俺の隣でガイが呆れた様に溜め息をついている。
まぁその意見には俺も同感だ。

皇帝勅命とやらで、いまやらされていること。

それは、陛下の部屋から逃げ出したブウサギの捜索だった。



宮殿の外には出ていないらしく、それだけでもまだマシな方だなと思う。

これで街の外なんかに逃げ出してたりしてみろ、それはもう考えただけでゾッとする。


「まぁ、仕方ありませんよ。あの方の馬鹿は死んでも直りませんから」

と、いかにも面倒くさそうににうさん臭い笑みを顔面に張り付けたジェイドが言う。

「やっぱ、地道に探すしかねぇのか」


逃げ出したブウサギの数は全部で5匹らしい。

それをこの馬鹿みたいに広い宮殿内を探し回るのは相当骨が折れる。

そして、こっちはさっきから必死で探しているにも拘わらずまだ一匹も見つけられていない。

「だーーっ!!!もう、どこにいんだよ!!!」

だんだんイライラしてきた俺はいつもの癖で頭をかきむしってしまう。


「お、苦戦してるみたいだな。お前ら」

そこへ悠々と現われたのはこの面倒事の張本人である陛下。

「ええ。人騒がせな皇帝のおかげでね。全く苦労させられます」

皇帝相手にジェイドはにこやかな笑顔で嫌味を返すのも忘れない。

それを気にするでもなく軽く笑い飛ばすと陛下は「まぁ、お前らには感謝しているさ」とジェイドの傍らを通り過ぎて俺の肩を叩いた。

なんで、ジェイドの方が陛下と近かったのに、わさわざ俺?

そんな陛下の行動を疑問に思う。

「で、どうだ?俺の可愛いブウサギ達は見つかったか?」

「いえ、まだ一匹も…」

俺が言えば「そうか」と少し残念そうに呟き、そして、何か思いついた様に「よし!」と声をあげた。


「俺も探すのを手伝ってやる!」

……。
ていうか、最初から全部自分で探して下さい。


とは言えず微妙な空気がそこへ流れる。
一部からは怒りを含んだ様な。


「なるほど〜。今まで陛下は私達に全て押し付けて何もなさるおつもりはなかった、と」

「俺は皇帝だからな。可愛いブウサギ達の事はもちろん心配だが、やる事だって山程あるんだ」

「それでしたら私達だって暇ではありませんね。貴方と違って仕事をサボって遊ぶ様な余計な時間はありませんし」

ちくちくとしたジェイドの嫌味が飛び交う中、ガイは関わり合いになりたくないという顔をしているし、俺だって死にたくはない。

でも、

「2人とももう止めて下さい!えっと…ホラ、陛下。一緒にあっち探しませんか?」

服の袖を引っ張る様にして、この嫌な空気の中から陛下を引きずりだしてみる。


「そうだな!行くか、ルーク」

ニカッ、と歯を見せて陛下が笑った。

我ながら大胆な事してしまったと思う。
唖然としているガイとジェイドに背を向け別の場所に移動する。
後ろから2人の微妙な視線が感じられるけど、気付かないフリをした。

「ルークの奴、いつの間にあんなに陛下と仲良くなったんだ?」

「さぁ〜?…まぁ、ルークもそれなりに成長しているという事じゃないですか?彼の陛下に対する苦手意識は相当なものでしたからね」

ガイ達がこっちを見て何か喋ってるけど、結構距離もあったし、なりより状況が状況で耳には入って来なかった。
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