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□ささいなことで
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本当はルークがここへ入ってきた時から仕事なんか全く進んじゃいない。
‥いや、その前からか。

「どうした?何か言いたげだな。」

分かってはいるが敢えて相手に問う。
全くおかしくて仕方がない。

「えっと‥その、俺なんかがこんな所にいていいのかな‥って。俺、仕事の邪魔じゃないですか?」

「俺が呼んだんだ。お前が変な気を遣う必要はないし、俺は邪魔になる人間をわざわざ呼んだりせんからな。」

心配無用だ。
そう言えばルークはホッとした表情で、じゃあ‥と続けた。

「俺なんかに一体何の用があるんですか?」

さっきからルークが聞きたがってた事だ。

‥そういや、まだ言ってなかったか。



「話し相手が欲しかった」

ただそれだけだ。

「‥‥‥は?」

思わず口から出たのか、その呆れた様な声に、まぁ当然の反応だなと思い、フンと鼻を鳴らしてみせる。

間の抜けた顔をしてこっちをまじまじと見てくるルークに俺はいつもの余裕の笑みで返す。


「まぁ、そういうワケだ。この仕事が片付くまで一緒にいてもらうぞ。」

さも当然の様に言い放ってみる。
『皇帝勅命だ!』とかか?
‥自分でもどうかしてると解ってる。


「ちょ、ちょっと待って下さい‥!本当にいいんですか?それって、他の人とかにバレたらやばいんじゃ‥」
「バレなきゃいい」

確かにジェイド辺りに知られると、後でこってり嫌味言われそうだな。

だが、そんな事今はどうでもいい。

その為にわざわざお前に来てもらったんだ。


「さて、と‥。諦めて続きやる事にするか。ルーク、お前がいてくれればはかどりそうだ」

運ばれてきた紅茶に手をつけながら、真面目に机の上の書類に目を通す。

「‥もう、好きにして下さい」

同じ様にカップに注がれた少し濃いめのミルクティーを啜りながら、目の前の少年は観念した様に溜め息をついた。

そうそう。最初からそれでいいんだよ。

こんなささいな事で至極楽しいと感じてしまうんだから、俺も単純なものだ。


end
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