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□きっかけは
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「それはな、お前に興味があるからだ」

「へっ?」

その言葉にルークは目を丸くして陛下を見上げた。

「お、やっとこっちを向いたな」
「え…?」


ルーク自身陛下からの視線を避けていた自覚はなかったが、その自信の無さから、無意識ではあるがまっすぐ相手の顔を見れないでいた。
その事を指摘されルークは更に目を見開いた。

だが、その後すぐにまた視線を下に落とし複雑な表情を浮かべる。

(俺に興味がある、ってそれって俺がレプリカだから…)

再び考え込んでしまったルークに陛下はその沈黙を遮る様に立ち上がり、ルークが座っていた側に移動すると腰を降ろした。

「…ルーク。おまえは自分の中だけに溜め込み過ぎだ。疑問に思う事があるなら直接俺に言え」

そう真剣な顔で言われて、思わずルークはそれに見入ってしまった。
しどろもどろになりながら返事をする。

「え、っと…はい…?」

「それでさっきの話に戻るが、あれは別にお前がレプリカだから言った訳じゃあない」

「それって…」
どういう意味、と聞こうとしたルークの言葉を遮って陛下が答えた。

「興味があるのはお前自身、って事だ。ルーク」

「…えっと…?」

一般人からのレプリカに対して浴びせられる興味津津な視線とは違う、瞳。

それでいてそれはとても温かな光を宿していて。

(優しい目…)

そう思った瞬間、ルークは言い様のない感情が自分の中に沸き起こるのを感じた。
苦しい様な、それでいてどことなく切ない様な変な感覚。
胸の辺りがジンと痺れてくる。

(なん、だろ…コレ?)

ぐっ、と胸を押さえるとルークは相手の顔を見上げた。
流石にこの胸の痛みの正体を聞く訳にはいかないが。

「陛下…」
「うん。少しはマトモな顔になったじゃないか。お前、今日会った時からずっと暗い顔してたからな」
「えっ…?」

今日謁見の間で会見した時、ルークにいつもの元気がない様に感じた。
何かに落ち込んでいる事はピオニーにもすぐ分かった。

「もしかして…心配して下さってたんですか…?」

ルークが意外な顔でピオニーの顔を覗いた。

(じゃあ、陛下が俺を部屋に呼んだのも俺の事元気づけようとして…?)
「まぁ、そういうことだ」

ニッと明るい笑みをルークに向けると、陛下の傍らで気持ち良さそうに眠っているブウサギを優しい手つきで撫でた。

「コイツはルークって言うんだ。…いい名だろ?」

(その名前!)

驚くルークににまるでいたずらが成功した子供の様に無邪気に笑う大人。

つられてこっちまで笑ってしまう。

こうして陛下の側にいると、なんだか悩んでいることがばかばかしく思えてきて。

これまで陛下に対して感じていた苦手意識が驚く程無くなっている事にルークは改めて気付いた。


「陛下、あの…」
「ん?なんだ」

ブウサギを撫でていた陛下の手が止まる。


「ありがとうございます。その、…俺、陛下の事ちょっと好きになりました」

その言葉に陛下はちょっと驚いた様で、でもすぐにちょっと嬉しそうないつもの余裕な笑みに変わって、

「なんだちょっとかよ。どうせならどーんと好きになれ」

その言い回しがあまりに陛下らしいので、おかしくなって2人して笑った。


その笑い声にブウサギのルークが起きてしまった様で、一つあくびをすると2人の間からするりと抜けるとまた幸せそうに寝息を立てた。




end
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