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□きっかけは
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そのありがたくもはた迷惑なお誘いにルークはどうこの場を切り抜けようか回らない頭で考えていれば、ルークがそうくる事も分かり切った上でピオニーは逃がすまいと掴んだままだった腕を引っ張られる。

「ちょ、陛下‥っ!」
「いいから来いって。せっかく俺のブウサギ達と遊ばせてやるって言ってんだ」

あくまで俺様なその態度にルークはなんだか何を言っても無駄な気がしてきて、諦めた様に軽く息を吐いた。

* * *

部屋へ入るとピオニーが溺愛しているブウサギ達が自由に部屋内を徘徊している中で、「まぁ適当に座れ」と促される。

一体どこへ座れば良いのかと程よく荒れた部屋を見渡しながら、仕方なく一匹のブウサギの側へ腰を降ろす。
見ればぐぅぐぅと気持ち良さそうに眠っている。

その主人はといえばその近くの椅子へと腰掛け、ゆったりとルークの様子を眺めていた。

(…ほんと、何考えてんだよ…この人)

皇帝陛下と2人きりという事を差し置いて、苦手意識のある人物と同じ空間にいなければならないというのはなかなかに辛い事だとルークは実感した。

その場の空気がなんとなく気まずくてルークは言葉を紡げずにいれば、その心情を読み取ったピオニーが会話を切り出した。

「どうだ、みんな可愛いだろ?」
「え、あ、はい…そう、ですね…」

当たり障りはないが、なんとも盛り上がらない返事しか返せない自分にルークは頭を抱えたくなった。
ピオニーは彼のそんな様子すら楽しそうに眺めている。

「みんな」というのはどうやらブウサギの事らしい。
余り耳に入ってはこないが、陛下のブウサギ自慢を聞かされる。
失礼にならない程度に相槌を打ちながら、ルークは相手の顔をチラリと覗き見た。

考えこんでいると笑いながら様子を尋ねられ、ルークは返答に困った。
考えていた事をそのまま口に出せるはずもなく。

自信満々のその態度、自然と人を引きつける独特な雰囲気で誰とでも気軽に打ち解けられる器用さと社交性。
一見いいかげんな風に見えるけど不思議な事に人望も厚い。
自分に持っていないもの。
足りないもの。

ルークは自分とは正反対のその姿に、自分の中から何かモヤモヤした感情が溢れ出すのを感じた。

「陛下は…その、なんで俺なんかを、気にかけて下さるんですか?」

なるべく失礼にならない様に気をつけながら相手の表情を伺う。

「ああ…その事か」

まるで自分が言おうとした事を分かっていたかの口振りにルークは驚いた。
その人の口から出たのは意外な言葉だった。
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