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□きっかけは
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グランコクマへ立ち寄った一行はピオニー陛下への謁見を済ました後、空いた時間を利用して自由行動を取ることになった。
それぞれ休息を取るものもいれば、女性陣は街へ買い物に行きたいと連立って出かけていった。
一人になったルークは特にやりたいこともなく、暇を持て余していた。
何をして時間を潰そうか考えながらブラブラと宮殿内を探索してみる。
ジェイドは溜まっている仕事があると宮殿を後にし、ガイとイオンは確か疲れたから宿に戻ると言っていたはずだ。
「俺も宿に戻ろっかな」
そう思いながら歩いてきたルークはふとピオニー陛下の部屋の前まで来ていた事に気付いた。
そういやこの部屋には今まで何度か来た事があるな、と思いはたと足が止まる。
訪れるたびに思う事。
ここは、正直とても、皇帝の部屋とは思えない惨状が広がっている。
(…早くここから離れよう。見つかったら、なんか厄介な気がするし)
考えながらルークは長い廊下を歩く。
・・・
ルークにとって皇帝…ピオニーとはジェイドの様に長い付き合いな訳ではなければ、そんなに親しい間柄でもない。
とはいえ、初対面の人間にも親しげに接してくれる様な気さくな人なので、そこまで気を遣う訳でもない。
実際の所、ルーク自身何故彼を苦手だと思うのかよく分かっていない様だ。
(一国の主としては尊敬できるし、すごい人だと思うけど、個人的にはちょっとなぁ…)
「お。ルークじゃないか。何してんだ?こんなトコで」
急に後ろから呼び止められギクリと肩が震えた。
この声の主は一人しかいない。
ルークは早くこの場を離れなかった事を後悔した。
「へ、陛下…!」
振り向けばそこには、今一番会いたくなかった人間の姿があった。
整った顔立ちに、引き締まった大人の身体。
どことなく気品が漂う佇まい。
ルークは自分より一回り程大きなその身体見上げた。
(こうしてるとフツーの男の人って感じで、格好いいんだけどなぁ…)
軽く挨拶を交わしすぐさまその場を去ろうとすると、その行く手を阻まれた。
「おい、もう行くのか?そう急ぐ訳じゃないんだろう?良かったら俺の部屋へ寄っていけよ」
「い、いえっ…その、俺ちょっと疲れてるので、宿に帰って休もうかと…」
ルークはそれこそ冗談じゃない、と慌ててその誘いを断る。
考えてみれば今までピオニーと接する時にはいつも仲間がいて、2人だけで話すのは今回が初めてだ。
そんなルークの態度に少し考える様な素振りをした後、何を思ったのかピオニーはルークの視線に合う様腰を屈めると距離を詰めてきた。
突然の事に「え?」と声を出す暇もなく真剣なまなざしでまっすぐ瞳の中を覗き込まれる。
ルークは自分の心を見透かされるのではないかと内心ヒヤヒヤした。
こんなに至近距離で陛下の顔を見た事はもちろんなくて少し心臓に悪い。
「陛下…、ちょっと、近いです…!」
身体を押し返そうとルークがピオニーの肩に手をかけると、何か思いついたのかその手を掴まれ目の前でニヤリと笑った。
嫌な予感がルークの頭によぎる。
「まぁ、そういうな。今可愛いブウサギ達に餌をやる所なんだ。特別にお前にも手伝わせてやる」