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□同化するように
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――あの太陽はお前の色だな
時には優しく時には強く、照らし導いてくれる…
――
「陛下」
後ろからトントンと肩を叩かれ、ピオニーははっと思考を現実へと戻した。
彼がこんな風になるなんて、珍しい事もあるもんだ。と、ルークは目を丸くした。
連日の執務で疲れが溜まっているのだろうか?
どこか締まらない顔をした皇帝を、ルークは心配そうに覗いた。
「ひょっとして…どこか具合でも悪いんですか?」
ルークの問いにピオニーは「いや…」とだけ短く答える。
まだ日も高い今の時間にこうして宮殿前の庭でのんびりと過ごす事が出来ている。
それは、今日の午前に「ブウサギを連れて散歩に行きたい」としつこくねだる皇帝に負けたジェイドが一日だけ休みを貰えたおかげだ。
まるで仕事に身が入らない皇帝を見てジェイドも何かを感じ取ったのだろう。
「陛下…?」
「ん、ああ…、お前に触れたいな〜と思っただけだ」
「なっ…!」
だから心配するな。と、からかうような笑顔で言われてしまえば、ルークはそれ以上追求する事もできずにぐっと声を詰まらせた。
普段からピオニーは「一人で抱え込まずに何でも話せ」と言ってくるし、いつもなら大抵の事ならルークに隠し事をしたりはしない。
それはもう、大切な事からくだらない事まで。
だから、やっぱり今日のピオニーはどこか少し様子がおかしい。
(…いや、変なのはいつもの事だけど、そうじゃなくて)
そんな事を一人問答しながらルークはもう一度、隣りに腰を降ろしているピオニーの横顔を見やった。
すると、青い目もまたルークの様子を伺う様にこちら側に向いていて、目が合った瞬間、ふっと細められた。
見られていた事に気付いたルークはつい視線を逸らせてしまう。
周りには暖かい日の中でブウサギ達が草を食んだり、寝そべったりしながら自由な時間を楽しんでいるようだ。
ルークはハァと一つ息を吐いて身動ぎした。
「…陛下、こっち向いて下さい」
ルークは両の手で相手の頬を包んで自分の方へ向かす。そのまま引き寄せていけば、さらに青が近くなる。
目を見れば少しは考えてる事が分かるだろうか。そう思っての行動だった筈なのだが、それは意外な方向へと向かう事になってしまう。
――ピオニーが急にルークの唇を塞いだからだった。