ZxL

□ずっと一緒に
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「…やるのか?本当に世界を統合できると思うのか?」

神妙な面持ちをしたゼロスが問う。

「やれる。俺は逃げない」

その目には揺らぎはなく強い光が灯っている。
返ってきた予想通りの返答にゼロスはふっと口許を緩めた。

「…わーったわった。ロイドくんの熱血ぶりにはフラノール中の雪がとけちまわぁな。…俺も腹をくくる。逃げない方向で一つやってみるとするか」

「ハハ。平和になったら好きなだけ逃げればいいからさ」

「そりゃどーも」

どこまでも前向きで真っ直ぐな、それでいて温かい…――ロイド・アーヴィングという存在。
その存在に惹かれたのは、きっと――、

「……ロイド」

気がつくと真剣な眼差しがじっとロイドを見据えていて。

「ん、どうした?」

「…この旅が終わったらさ、俺と一緒に………いや、なんでもない…」

言葉を途切り、自信がないといった感じで視線を彷徨わせるゼロス。
しかし、もちろんそんなゼロスの曖昧な態度がロイドの心を納得させる筈もなく。
眉間に皺を寄せ、ゼロスに詰め寄った。

「なんだよ、言いかけて止めるなよ。気になるだろ?」

「…聞きたいか…?」

「…?…ああ…?」

自分から話を切り出しておきながら人に尋ねるとは…そんなに言いにくい話なのかとロイドは頭を捻った。
もし、ロイドがこの先を聞きたがらなければ決してゼロスは言おうとしないだろう。そんな気がした。

「聞きたい。お前が考えてる事、知りたいと思う」

ロイドらしいストレートは言葉。ゼロスは自分の想いを伝える時が来たのだと覚悟を決めた。

「じゃあ、こっち来て。…耳、かしな」

人一人分くらい空いていた2人の距離がロイドが近付いた事により縮まる。

「…これでいいのか?」

「ああ…。いいか、一度しか言わねえから、良く聞いとけよ」

「お、おう…」

普段とはまるで違う、緊張した面持ちのゼロスにロイドも自然と顔が強張る。こんなゼロス初めて見るな、とロイドが考えている内に、端正なゼロスの顔が近付いてきてロイドの耳へと寄せられた。
さらに縮まった距離にロイドの心臓が跳ねた。

「…―――」

吐息と共に耳に吹き込まれた言葉に、ロイドは大きく目を見開き身を固くする。
ゼロスが発した聞き取れるかどうか分からないくらいの小さな音。しかし、それはロイドにはしっかりと届いた様だ。

「…ゼロス…」

ロイドは胸の辺りがざわざわと音を立てている気がした。口の中が乾いて、顔が燃えるように熱い。

沈黙のまま時間が流れる。どちらからも言葉を発する気配はなく、妙な静けさの中に密着した2人分の吐く息の音だけが響く。それがロイドにはやけにリアルに感じられた。

しばらくしてゼロスは脱力した様に「はぁ〜〜」と息を一気に吐き出し、ロイドの肩口に顔を埋めた。

「俺さま…かっこわり…」

ボソリと呟かれた台詞にロイドは顔をあげた。
肩にしっかりと埋まった顔はここからではその表情を覗く事はできない。
けれど密着した身体から伝わってくるゼロスの速い鼓動に、ロイドは妙に安心している自分がいる事に気付く。自分のそれと同じだったから。

「…なんで?俺はいつもみたいにヘラヘラしてるお前よりも、こうやって本気でぶつかってきてくれるゼロスの方が格好いいと思うぜ」

「っ、この…天然タラシ…っ」

「うー」だとか「あー」だとか妙な唸り声を上げながら身を震わせるゼロス。
ロイドはふと考えてその背中に腕を回した。


「…俺も…」

「へ?」

「俺もお前の事………だから…」

「……!」

途端にバッと身を離された。その表情は驚愕の色がありありと浮かんでいる。

「ま、マジで……?」

信じられないといった表情のゼロス。

「当たり前だろ!?こんな時に嘘なんてつけるか!」

思ったままを口に出すロイドに、次第にゼロスの口許は緩んでいく。

「…ハニー、耳まで真っ赤」

「うるせ、お前だって同じだろ…」

そっぽをむくロイドにゼロスは心の底から喜びが沸き出るような感覚がした。素っ気ない言葉、それはロイドの照れ隠しだと知っているから。

ゼロスは一端離した距離を再び詰めて、ロイドの細い身体を自分の腕の中にすっぽりと納めた。
背中に腕を回し、強く抱き締める。

「ロイド……好き…」

「…一度しか言わないんじゃなかったのかよ?」

「…いいんだよ。…何度でも言いたいんだから」


全身に広がる体温とゼロスの優しい香りに包まれながら、ロイドは彼の想いに答えるべく腕を回しそっと目を閉じた。


end.

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