宝物

□擦れ違いながら
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ピオニーの私室には、ペットであるブウサギが六匹闊歩している。
他の部屋には、もっと多くのブウサギがいるが、今回は触れる必要の無い事である。
何はともあれ、ピオニーはブウサギと生活をともにしており、彼らもピオニーを飼い主と認識して懐いている。
のだが、何故かよく逃げ出して、ピオニーではなくガイを困らせている。
執務の合間に作るブウサギの世話をしている間が、ピオニーの楽しみを感じる瞬間の一つである。
いつもは締まりのない表情を浮かべているピオニーではあるが、本日は非常に渋い顔をしている。
視線の先には六匹中五匹のブウサギに懐かれ、戯れつかれているルークの姿。
困ってはいるようだが、満更でもなさそうなルークに、ほんの少し、というか盛大に面白くない。

「ブヒ?」

「……全く、俺の相手しているときはあんな顔してくれた事なんてないんだぞ」

飼い主であるピオニーの様子が、いつもと違うと感じたのか、離れなかったルークと名の付いたブウサギは僅かに首を傾げた。
ピオニーはブウサギのルークの頭を撫でながら、ブチブチと不満をもらす。
ブウサギの世話以外に、最近見つけた楽しみの一つ。
レプリカである自身の存在に後ろめたさを抱きながらも、無知であった己の引き起こしてしまった惨劇を懸命に償おうとするルーク。
そんな不器用なルークが愛しくてしょうがないのだが、そのルークはピオニーが苦手であるのか、構いに行けば始終、困ったような、困惑したような表情を浮かべている。
ブウサギ相手だと、そんな事もないので、少々妬ましいところだ。





はぁぁ。とブウサギを撫でながら、吐き出された大きな溜め息が耳に届いて、ルークは顔を上げる。
溜め息を追って目を向けた先には、己の名を冠するブウサギを撫でて、ふてくされているピオニー。
ルークは瞳を伏せて、戯れてくるブウサギの頭を撫でる。

「…俺、どうすりゃいいんだろ。どうすりゃ…あんな顔させないですむんだろ」

「ブヒ?」

「……って、俺はブウサギに何言ってんだろ」

撫でられていたブウサギが、悩みを含んだルークの呟きに首を捻った。
だが、目の前にいるのが、ブウサギである事にルークは、誰に言ってるんだ。と肩を落とす。
座っている膝に前足を置き、顔を近づいてきたブウサギの一匹の頭を撫でて、浅い笑みを浮かべる。
ルークはピオニーにどう接したら良いのかわからない。
マルクト帝国皇帝である、ピオニーの領地で惨劇を引き起こしてしまった。
負い目を感じるルーク。だが、ピオニーはそんな事気にすることなく、他の者と変わらず接してくる。
どうしていいのかわからないルークは、困惑したような反応しかできない。
ブウサギを挟んで成り立つ二人の関係。
ピオニーに撫でられる、自分の名を冠するブウサギが羨ましくなってしまった。
けれど、口に出せなどしない。
顔を寄せてきたブウサギをギュッと抱き締めて、ルークは小さな溜め息を吐き出した。




END



――――――――――――



彩様へ。
ピオニーとルークでブウサギでほのぼの。
と承ったのですが…………ほのぼの?


すいません!彩様!
こんなんですが、もらってやってください!


甘酸っぱい感じが出てれば………良いんだけどなぁ。




.

***

ありがとうございます!!
予想外な展開でしたが(笑)流石といいますか、素晴らしいお話だと思いますv
お互いに不器用ながらの心情が伝わってきて、キュンとなりました。
きっと、幸せになって欲しいものです‥。

本当にありがとうございました!宝物にしますv

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