宝物

□春うらら
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季節はすっかり春めいて、ちらほらと花が咲き出した。
時折聞こえる小鳥のさえずりが、穏やかな気候によく溶け込んでいる。
そんなある日の午後の出来事。

「さあて、俺もたまには主人らしく、コイツらを散歩にでも連れてってやるか」

四肢を投げ出してソファーに沈み込んでいたピオニーは、窓の外の景色を眺めながらそう呟いた。
その周りでは、彼の大事にしているペット達が楽しそうに群れている。

「珍しいですね、陛下がブウサギを散歩に連れて行くなんて‥。けど、是非そうしてあげて下さい。きっと喜びますよ!(最近ガイの奴、世話疲れのせいかちょっとやつれた感じっぽかったからなぁ)」

「何言ってる。俺は本当はコイツらの世話は全部自分でやりたいと思ってるぞ。まぁ、皇帝という立場上、ガイラルディアに任せっきりになってしまってはいるがな」

甘えた様に足にすり寄ってくるブウサギを、よしよしと宥めてやるピオニー。
その様子を隣りで眺めながらルークは、陛下はブウサギが本当に大切なんだな、と改めて実感した。

さて、と一呼吸置いて、ピオニーは立ち上がる。

「ルーク、もちろんお前も一緒に来るだろう?」

当然の様に言い放ち、腕を掴まれ引かれた。
飛び込んだ先には優しく笑うピオニーの顔があって、頭を撫でられた。
まるで、こっちが甘やかされるブウサギの気分だ。

「可愛いな、お前は」
「‥からかわないで下さい」

ピオニーの腕の中でほんのり顔を赤らめながら、ルークは先程の答えの代わりに彼の服の裾を掴んだ。

end.

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