宝物
□明日、晴れたら
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「…ハニー、俺さまもう限界なんだけど!」
急に起き上がったかと思えばいつになく余裕の無い瞳をしたゼロスに肩を掴まれた。一体何事かと目を丸くするロイドをよそに、飛び出してきたのはそんな言葉。
ガッシリと掴まれたままの肩が少し痛い。
「急にどうしたんだよ?ゼロス」
突然のゼロスの行動に状況が掴めずにロイドは眉を顰める。
「どーしたもこーしたもあるかっつーの。こんな狭っくるしい船ン中に押し込まれて、俺さま我慢できるかっての!おまけに右も左もガキばっかだし!」
突然怒り出したゼロスにロイドは意味が分からなくて、首を捻る。
ああ、もう!その動作も可愛い!…そんな心の叫びは胸中だけにとどめておいて。
「さっきから何が言いたいんだよ?今日が雨なのは仕方がない事だろ?町に行くのはいつだっていいだろ」
「〜〜っ、だから!欲求不満だって言ってんの!!」
ゼロスが叫んだ瞬間、一瞬空気が止まった気がした。
「は…?な、何言ってんだよ…!お前…っ」
意味が分かった途端にロイドが顔を赤くさせた。
「だって、もうずーっとしてないんだぜ!?」
「そんなの仕方ないだろー!?それにこの船に来る前も、お前がメンバーになった後だって色々忙しかったし…」
「仕方ないで済まされちゃこっちはたまんねーんだよ!俺がどんだけ我慢してると思ってんだ」
思わず「知るかよ!」と返しそうになって、ロイドは口を噤んだ。内容が内容なだけにこれ以上の口論はマズい。誰かに聞かれようものなら恥ずかしさで今なら死ねる気がした。
ゼロスはバツが悪そうにチッ、と舌打ちをする。
本当はこんな事を言ってロイドの気持ちを追い込んでしまうつもりじゃなかった。
それに身体だけが目当てだと誤解されたくもない。
もっと大切にしたいのに…。