KxR
□祝福
2ページ/2ページ
急に黙りこんだキールを見て、今度はリッドが眉を寄せる番だ。
「どうしたんだよ?キール……って、…んんっ?」
くぐもった声を漏らすリッド。
突然顔を上げたキールがリッドの唇を塞いだのだ。
己のそれによって。
「っ、ぷは…!いきなり、何すんだよ!?」
解放されると、リッドは顔を真っ赤にして抗議する。
行為自体に抵抗がある訳ではないが、なにしろ急すぎる。
「リッド。来年も再来年も、この先もずっと、ぼくがお前の誕生日を祝ってやる。」
「………それ、プロポーズのつもりか?」
「茶化すな!ぼくは真面目に…!」
自分が口にした言葉に恥ずかしさを覚えたのか、今度はキールが赤面した。
「へいへい。嬉しーよ。…サンキュ、な。キール」
「……っ!」
ドサリ。
リッドの視界が回った。
何故だかまた草の上に戻されている。
それがキールに押し倒されたのだと気付いたのは、真剣な表情で自分を見下ろすダークブルーの瞳と目があったせいだ。
「なぁ、キール…。まさかとは思うが、こんなトコで何かしようってんじゃないよな…?」
思わず顔が引きつる。
キールはいまだ真面目腐った表情のままだ。
「………リッド」
リッドの首筋にキールの顔が埋められた。
「う、わ!!ちょ…ちょっと、待てって…!!」
怪しげな雰囲気になりそうなその場の流れを変えたのは、少女の叫び声だった。
「あーー!!もう、2人ともこんな所にいた!キールも!リッドを連れてくる様に頼んでた筈でしょっ!?」
「ファ……ファラ…!?」
2人してその体勢で固まって、声の主をぎこちない動作で振り返った。
「ご飯できたから来てって言ってたのに…。せっかくのご馳走が覚めちゃうでしょ!?」
この状況下にして、それをものともせずファラはガミガミと2人を叱る。
「……ご…ごめん、なさい…」
言い訳もできない状況に、2人はただただ謝るしかない。
「いつまでもじゃれ合ってないで、早く来てよね!?今日はリッドの誕生日パーティなんだから!」
そう言い残し、呆然とする2人を残して帰っていくファラ。
なんとも言えない空気の中、先に口を開いたのはリッドだった。
「……これ、じゃれてる様に見えるか?」
「……ファラがそう言うなら、そうなんじゃないのか…?まぁ、どちらにせよ助かったよ…」
疲れた様にキールが呟く。
もうそんな気すら失せてしまった。
「戻るか。これ以上ファラを待たせたら、どうなるか分からない」
「そう、だな」
ゆっくり身体を起こし、2人は帰路へとつく。
そうだ、と思い返した様にキールが呟く。
「誕生日おめでとう、リッド」
「あぁ…」
瓶の中でカラリと音を立てる、その中の一つをリッドは口の中に放り込んだ。
end.