KxR

□祝福
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急に黙りこんだキールを見て、今度はリッドが眉を寄せる番だ。

「どうしたんだよ?キール……って、…んんっ?」

くぐもった声を漏らすリッド。
突然顔を上げたキールがリッドの唇を塞いだのだ。
己のそれによって。

「っ、ぷは…!いきなり、何すんだよ!?」

解放されると、リッドは顔を真っ赤にして抗議する。
行為自体に抵抗がある訳ではないが、なにしろ急すぎる。

「リッド。来年も再来年も、この先もずっと、ぼくがお前の誕生日を祝ってやる。」

「………それ、プロポーズのつもりか?」

「茶化すな!ぼくは真面目に…!」

自分が口にした言葉に恥ずかしさを覚えたのか、今度はキールが赤面した。

「へいへい。嬉しーよ。…サンキュ、な。キール」

「……っ!」

ドサリ。
リッドの視界が回った。
何故だかまた草の上に戻されている。
それがキールに押し倒されたのだと気付いたのは、真剣な表情で自分を見下ろすダークブルーの瞳と目があったせいだ。

「なぁ、キール…。まさかとは思うが、こんなトコで何かしようってんじゃないよな…?」

思わず顔が引きつる。
キールはいまだ真面目腐った表情のままだ。

「………リッド」

リッドの首筋にキールの顔が埋められた。

「う、わ!!ちょ…ちょっと、待てって…!!」


怪しげな雰囲気になりそうなその場の流れを変えたのは、少女の叫び声だった。

「あーー!!もう、2人ともこんな所にいた!キールも!リッドを連れてくる様に頼んでた筈でしょっ!?」

「ファ……ファラ…!?」

2人してその体勢で固まって、声の主をぎこちない動作で振り返った。

「ご飯できたから来てって言ってたのに…。せっかくのご馳走が覚めちゃうでしょ!?」

この状況下にして、それをものともせずファラはガミガミと2人を叱る。

「……ご…ごめん、なさい…」

言い訳もできない状況に、2人はただただ謝るしかない。

「いつまでもじゃれ合ってないで、早く来てよね!?今日はリッドの誕生日パーティなんだから!」

そう言い残し、呆然とする2人を残して帰っていくファラ。

なんとも言えない空気の中、先に口を開いたのはリッドだった。

「……これ、じゃれてる様に見えるか?」

「……ファラがそう言うなら、そうなんじゃないのか…?まぁ、どちらにせよ助かったよ…」

疲れた様にキールが呟く。
もうそんな気すら失せてしまった。

「戻るか。これ以上ファラを待たせたら、どうなるか分からない」

「そう、だな」

ゆっくり身体を起こし、2人は帰路へとつく。

そうだ、と思い返した様にキールが呟く。


「誕生日おめでとう、リッド」

「あぁ…」

瓶の中でカラリと音を立てる、その中の一つをリッドは口の中に放り込んだ。



end.
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