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□祝福
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サワサワと草が風へなびく音が心地よく耳へと届く。
いつものお気に入りの場所で寝転びながら、空を眺めているリッド。
ゆっくりと流れてゆく雲を目で追いながら、リッドは大きなあくびをした。
「ふぁ〜、気持ちい〜。ほんといい天気だよなぁー…」
まぶたを閉じようとすると正面からのぞき込む様に影ができた。
「キール」
「リッド、やっぱりここにいたか。ファラが怖い顔してお前の事探してるぞ」
リッドは眠そうに目を擦りながら、ゆっくりと上体を起こした。
「そんで?その事伝える為にわざわざオレを探してたのか?」
さして興味もなさそうに問い掛ければ、リッドと同じ様に隣りに座ったキールがふっ、と柔らかく笑った。
「まぁ、それもあるが、お前に渡しておきたいものがあって…」
「なんだよ?」
懐からキールが取り出したのは、掌に乗るサイズの小瓶。
ガラスの表面が紙で覆われているため渡されたそれに、何が入っているのか想像がつかなくてリッドは首を傾げる。
「開けてみれば分かるさ」
そう言うキールの顔がほんのりと赤い気がするのは気のせいだろうか。
頭に『?』マークを浮かべながらリッドはその蓋を開ける。
「キール。これって…?」
「お前、昔からこれ好きだったろ?」
振れば瓶の中でカラカラと音が鳴る、色とりどりのそれら。
「飴玉じゃねーか。そりゃあ、好きだけどよ。どうしたんだよ?コレ。」
キールが自分にこんなに優しくしてくれるなんて、明日はきっと嵐だな‥とリッドは思った。
流石に口には出さないけれど。
「今日はリッドの誕生日だろ?お前には食べ物をやるのが一番手っ取り早いと思ってな」
「なんだよ、それ。けど…オレ、自分の誕生日なんてあんま祝って貰った事ねーから、すっかり忘れてたぜ」
それを聞いてキールはハッとした。
そうだ、リッドはあの事件の後からずっと一人で生きてきたんだ。
あの頃の自分は子供だったので仕方ないとはいえ、逃げる様にミンツへ引っ越してしまった。
キールはその事を悔やんだ。
過去にいつまでも捕らわれていても意味がない事は分かってはいるけれど。