KxR
□無限
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『ぐぅ〜〜』
なんとも間の抜けた音が部屋中に響いた。
またか、と読みかけの本からは目を離さずに内心溜め息をつく。
毎度の事ながら、リッドの胃袋は一体どうなっているんだ、と思う。
今回も例に違わず。
「キール。オレ、ホットケーキ食いたい」
「……、…それで?」
「作ってくれよ」
「自分で作ればいいだろ」
「無理。腹減って一歩も動けねぇ〜…」
ソファーにだらしなく寝そべり「腹減った」とぼやいているリッドを一瞥して、無視を決め込む事にした。
しかし、リッドの腹の虫が先ほどから盛大に自己主張していて、どうにも収まりそうにない。
こううるさくては読書にも集中できない。
貴重な読書の時間を割くのは不本意だが、致し方ない。
「全く、なんでぼくがこんな事を…」
ブツブツ文句を言いながらも台所に向かう。
そうしないとこの試練からは解放されない。
「サンキュー、キール。悪いな〜」
ヒラヒラと手を振るリッドの姿が見える。
「謝るぐらいなら、自分で作ってくれ…」
(ぼくがリッドと一緒にいる限り)
多分、きっと一生終わりのない試練なんだろうな、とどこかぼんやりと思った。
end.