KxR

□我儘
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「リッド、勉強見てやろうか?」

急に目の前に現れたと思ったら、堅物な学士さんはいきなりこんな事を言い始めるのだから分からないヤツだ。

「なんだよ、急に?」

いままで散々『嫌だ』だの『忙しい』だの断られてきたのに、どういう風の吹き回しだろうか。

「今、進めている論文がようやく一区切りつきそうなんだ。時間がある時ぐらいお前の勉強を見てやろうと思ってな」

それでさっきからやたらと機嫌がいいワケなのか、コイツ。

というより、コイツの気持ち自体は有り難いけど、正直…

「なんつーか、今はいいわ。さっきロイド達と一緒に宿題やったばっかだし…」

続け様に机の前になんか座りたくない。

一応、気は遣って言ったつもりだが、キールからさっきまでの生き生きとした表情が消え、微妙に気まずい空気が流れる。

「なんだよ…。いつも問題につまづくと、ぼくに聞いてくるくせに」

そりゃあ〜…まぁ、アレだ。

「それは、お前が暇そうにしてるからだろ?」

オレの言葉にピクリとキールの肩が揺れた。

「ぼくはそんなに暇じゃない。いつだって頭の中では論文の…」
「あーー、分かった分かった」

なんとなく、腹立ってきた。

「お忙しい学生さんにくだらねーコト聞いて悪かったよ。オレに構わず本業にいそしんでくれよ」

「おい、なんでそうなるんだよ?今は大丈夫だって言ってるだろ」

なんか、言い争うだけ無駄な気がしてきた。

「いいって言ってんだろ!わかんねートコはさっきゼロスに教えてもらったし」

その言葉に一瞬キールの表情が固まった気がした。

「…ゼロスに?」

「あぁ、数学。得意らしーぜ。誰かさんとは違って丁寧に教えてくれたぜ?」

こんな事言ったらまたコイツが怒るの分かってるけど、どうにも止まらない。

さらにキールの表情が険しくなるのを気配で感じた。

「……そうか、分かった」

と、急にオレに背を向けて歩き出すキール。
予想外の反応に、少し間の抜けた声が出た。

「おい…?キール?」

どこ行くんだよ、と肩を掴むと小さく「離せよ」と手を弾かれた。

「怒ってんのかよ?」
「…別に怒ってない」

嘘つけ。
じゃあ、何でそんな顔してんだよ。

「もしかして、嫉妬か?」

「だったら悪いのか?」

冗談めかして言ったつもりが意外と真剣に返ってきた答えに、またしても面食らった。

そっぽを向いて拗ねた様なその口振り。

「や、そんな事はねーんだけどよ…」

ったく、調子狂うんだよなぁ。

「しょーがねぇなぁ〜。勉強、教えてくれよ」

これがオレなりの譲歩だ。

頼み方に不満があるだとか、文句を言いながらもちゃんと教えてくれる辺りがコイツらしい。


しょーがねぇだろ。
お前今日はずっと難しい顔ばっかしてたし、なんか話しかけ辛かったんだよ。

とは、癪だから言ってやらねぇけど。



end.

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