KxR
□感触
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「………」
キスした時、何か違和感があると思った。
かさついたキールの唇がオレに触れる。
「お前、口カサッカサだな」
「そりゃ、一応緊張だってするさ…」
や、そういう意味じゃなくてよ。
「ソレだよ!なんかすげー荒れてんぞ。大丈夫かよ?」
口元を指差しながら指摘してやると、キールはようやく合点がいったように「ああ」と小さく呟いた。
「別に平気だ。切れてはいないみたいだし。多分、ここ最近の気候の変化の影響だろうな」
具合を確かめるように自分の唇をなぞるキールの指。
「そーいや、お前小さい頃からストレスとかに弱かったよな」
オレ達が今いるここが乾燥地帯だって事も、理由の一つかもしれないけど。
「まぁ、…あんま無理すんなよ?」
オレの言葉に少し意外そうな顔をしながら、キールはガサゴソ荷物を漁り出す。
その中から軟膏らしきものを取り出し、中身を塗り付けている。
まぁ、ないよりはましか。
「ファラかメルディ辺りなら持ってんじゃね?“リップクリーム”ってヤツ。行って借りてくれば?」
「馬鹿だな。こんな夜中じゃ彼女達だってもう寝てる筈さ。それにこんな時間に女性の部屋へ行けるか」
そりゃそーだ。
そーいうオレらは、こんな時間に起きて一体何してんだか。
だいたい、なんでこんな事になっちまったんだっけ?
「リッド…」
再び落ちてきたやる気満々のキールの唇に、おとなしく目を閉じてそれを受け入れる。
今度は心なしかしっとりとしたその感触に、少しの時間酔い痴れてみる事にした。
end.