KxR
□興味
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「なぁ、キール。お前…キスしたことあるか?」
「………は?」
余りにも唐突すぎるリッドの問い掛けに、我ながら間の抜けた声が洩れた。
いきなり何でそんな事を言い出したのか、その経緯が解らない。
ここは宿屋で、今はリッドと2人部屋。
しかし、そんな会話に至るような話をしていた訳でもなく、お互いに別の事をして時間を過ごしていたから。
僕はベッドサイドに腰掛け読書に集中していたおかげで、少し反応が遅れてしまった。
リッドはというと先程から変わらず、隣のベッドに突っ伏した体勢で、視線だけをこちらへ向けてくる。
その思考回路が全くもって読めない。
「いきなり…何を言い出すんだよ」
心の中ではかなり動揺していたが、そんな態度を表に出す訳にはいかない。
冷静を装って声をかける。
「んー?ただ、気になっただけだ。実際どうなんだよ?」
「どう、って言われても…」
あるわけない。
今まで学生として研究と勉強にだけにその時間を費やしてきたのだから。
「…リッドは?」
「俺?あるわけねーじゃん。だいたい女とか‥そーゆーのいなかったしな。だからお前に聞いてんじゃねぇか。どんな感じなのかなー、と思ってよ」
驚いた。
リッドからそんな言葉が出てくるなんて。
聞くのはもちろん初めてだが、そういう事に興味がある様な素振りなんて見せた事がなかったから。
まぁ、男として、それは当たり前と言えば当たり前なんだが。
「それは、僕に聞かれても…」
どうとも返答し辛い。
「フーン、そっか。…あ、だったらよ!」
突然身を起こし、わざわざこちらのベッドまでやってくるリッドに嫌な予感が走る。
ギシリと音を立て、ベッドが軋む。
逃げようかという選択肢は、僕の身体の横に置かれた両手によって奪われた。
「リッド…、な、何を…っ?」
「試してみねぇか?…キール」
「………」
断る理由はない。
僕は、リッドの事が…好きなのだから。
心臓がこれでもかというくらい煩くて、つい目を閉じてしまった。
ふいに唇に当てられたその感触に、身体全体がカァッと熱くなる。
「……ン」
すぐ離れていったそれに、なんだか名残惜しい気がして。
「…思ったより、柔らけぇな…。…って、わぁ!!?」
「…お前が、悪い…」
僕の心の鍵を簡単に開けておいて、今更逃げれると思うなよ。
end.